これまで大きくプライベートを語ることがなく、ミステリアスなイメージに包まれていた女優の常盤貴子さん。今月発売された初のエッセイ集『まばたきのおもひで』では、喫茶店巡りが趣味であること、大好きだった古着が似合わなくなってきたことなど、ほっこりとした素顔が垣間見えるエピソードを多数披露しています。現在47歳。年齢との向き合い方、これからの生き方についても伺いました。

(この記事は2019年10月1日に掲載されたものです)

女優・常盤貴子さん47歳の人生の転機「古着もTシャツも似合わなくなったとき」_img0
 

常盤貴子
1972年4月30日生まれ。神奈川県出身。1991年に女優デビュー。『愛していると言ってくれ』、『Beautiful Life〜ふたりでいた日々〜』、『グッドワイフ』(すべてTBS)など、多数の主演ドラマが社会現象になるほどのヒット。『20世紀少年』、『野のなななのか』、『だれかの木琴』など多くの映画にも出演。ほか、CMや舞台、ナレーションなど活動は多岐にわたる。Instagram:@takakotokiwa_official

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初めてのエッセイでは自分の脳内をさらけ出しました


ーー常盤さんというと、今までミステリアスなイメージが強かったんですけど、今回のエッセイから素顔が垣間見えました。

たしかに読んでくださった方からは、「普段のイメージとは全く違う」とよく言われました。ここまで脳内をさらけ出すってインスタですらやらないですし、インタビューでも自分の全てを話し切れるものでもないですもんね。「本当に自由に書いていいよ」という場だからこそ出てきた、普段私がボーッとしているときに考えるどうでもいいことがいっぱい詰まっています(笑)。

ーーとくに、言われた中で印象に残っている言葉はありますか?

「そうやって見るんだ!?」というのはよく言われましたね。同じものを見ていたのに全然見ているところが違った、とか。たとえば新潟県の長岡市で錦鯉を見たエピソードがあるんですけど、一緒に行った方に「隣でそんなことを考えていたとは思いもしませんでした」と言われました。

ーーご自分で自覚は?

よくインタビューでお話していると、「常盤さんの面白さをもっと伝えた方がいいですよ」と言われることもあるんですが、「いやいや、女優に面白さいらないでしょ」と笑い合ったりはしていました。他の女優さんとかがあまり言わないことをたまに言ったりしているのかなあ、と薄々は感じていたんですけど、個性の強い人だらけな芸能界においては、別に言うほどのこともないので「まあこれも個性の一つですかね」ぐらいの意識でした。


喫茶店にはその土地の全てがある


ーー喫茶店巡りとか古いものが好きというのも興味深かったんですけど、最近は特にどのようなものが好きなのですか?

相変わらずレトロな喫茶店のパトロールはずっと続けています。昨日も京橋に行ったんですけど、レトロな喫茶店を調べて、入ってみて。

ーー喫茶店では何をされるんですか?

私が落ち着いて本を読めるかどうか、それを確認するだけなんです。あとブレンドを必ず飲んで、味のチェックをして。といっても全部、自分基準での判定でしかないんですけど。
私にとって良い喫茶店の基準は、落ち着いて本を読めることはもちろんなんですけど、あと、地元のおじいちゃんとかおばあちゃんが楽しそうにしている、ということが重要で。世界中どこに行っても、そのチェックをするんです。

ーーそれは、昔から……?

はい、高校生の頃から喫茶店が好きで、誰に報告するでもないんですけど、地道に良い喫茶店を探し続けています。
何かね、私にとっては観光名所を見るよりも喫茶店を見るほうが、その土地の文化や風土を知ることができるんですよ。何を食べているかとか、どんな気質の人たちなのかとか、どんなふうに過ごしているのかとか、全てがそこにあるから。
だからどこに行っても、まず喫茶店を探して入る。昔からひたすらそれを続けているんです。オタク活動ですね。

ーー古いものが好きということも書かれていましたが、古いもののどこに惹かれるんですか?

何でも好きなんですよね。家具も車も建物も服も、何もかも。だから老舗の喫茶店なんて行くと、ゾクゾクします。百年前にあの文豪が来ていたとか、もうそれだけで夢があるじゃないですか?「あの席に座っていたんだ」とか思うと、素敵!って(笑)。
古いけれども今ここにあるということは、その前の人たちが大事に大事に使ってきたからこそ。その年月が素敵だな、と思うんです。だから私もその思いを受け継いで、次に渡すために大事に使わなきゃ、と思いますし。ただ洋服だけは古いものが似合わなくなってきている。最近は、着るとただの古い人になってしまうという……。


「いつまでも若くて」という言葉が
悪口になればいい

女優・常盤貴子さん47歳の人生の転機「古着もTシャツも似合わなくなったとき」_img1
 

ーーまさに40代って、好きだったものが似合わなくなった、という戸惑いが生まれる時期でもあると思うのですが、常盤さんはその変化とどう向き合われましたか?

古着に関しては、基本諦めました(笑)。あとはベルトとかアクセサリーとか、ポイントで使っていこうかな、と。軸にしようとしたらアウトです(笑)。やはり大人って、生地感とかそういうものによって判断されるところもあるじゃないですか。だから最近は古着に限らず、素材感にすごく気をつけるようになってきています。昔は何でも大丈夫と思っていたけど、今は全然大丈夫じゃない(笑)。

ーー年齢を重ねると今まで大丈夫だったものがダメになってくる、という経験は多いですよね。

Tシャツとかほとんど着られなくなりません? 似合うTシャツが本当に少なくなりますよね。だからというわけでもないんですけど、私、海外とか行くとカフェのオープンテラスを陣取って、ずーっと街行く人を見ているんです。
それで、素敵だと思った人は「どこが素敵なんだろう!?」とか、「オシャレだけどやり過ぎて見えるのは何でだろう」とか、観察する。“まばたきシャッター”状態です。

ーー年齢に抗いたい、という考え方もありますけど……。

昔からよく思っていたんですけど、「いつまでも若くて」という言葉が悪口になればいいのにって。歳をとると、それがみんなの合い言葉みたいになっているじゃないですか。若く見えることがいいこと、みたいな。

ーーもともと歳を重ねることへの恐怖心は少なかったんですか?

私、あんまりないんですよね。女優っていろいろ年齢のポイントがあって、まず結婚している役をやるかどうか問題、次が子供がいる役をやるかどうか問題。そういう年代に差しかかったとき、まわりの人からは「まだやらないほうがいいよ」とか「やっちゃいけないよ」とか言われたんですけど、私は「でももう子供がいてもおかしくない年齢になっているんだから、別にいいんじゃない?」と思って。そこでわりとすんなり演じられたことも、今につながってきているなと思うんです。
「そういう年齢でしょ」って受け入れちゃえば、馴染むのも早くなる。そうしたらその年齢を早く楽しめるし、早く対処もできる。でも遅くすれば遅くするほど、後が大変になってくると思うんですよね。どうせ歳はとるんだから、余裕をもって早めに望みたいなって思っているんです。

 
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