● 中村軒 「麦代餅」

 
 

桂離宮のすぐそばに店を構えて130余年の京の甘味処。市内からちょっと距離はありますが、昔ながらの風情のある店内でいただくぜんざい、あべ川餅、お団子、おまんじゅう、にゅうめん……どれも最高。店頭に並ぶお饅頭や品書きを見ているだけで、ほっこりしてきますね。足をのばす価値ありの、名甘味処です。ところで、桂離宮は行ったことありますか?昔は予約制で、拝観もなかなかハードルが高かったのですが、昨今は平日なら、1時間前に行って予約をとればOK。日本人なら一度は見なければ、の、美しさです。まだの方は、ぜひ中村軒とセットにして楽しんでください。
さて、お土産には、なんといっても名物の麦代餅(むぎてもち)です。麦代餅は、その昔は、田植えどきの間食として食べられたもので、各田畑まで直接店から届けたのだとか。そして、農繁期の終わりに、代金として麦をもらったことから、麦代餅という名がつきました。麦代餅の間にはさんだ粒餡は、国産の上質な小豆を使っていることはもちろん、昔ながらのおくどさんで上木(くぬぎの割り木)を燃やしてじっくり炊き上げます。ガス釜のように火を止めてもすぐ温度が下がらず、おくどさんのレンガや土が抱いている余熱が餡を美味しく仕上げてくれます。もっちりとした餅生地にたっぷり包まれ、上にはきなこがはらり。素朴だけれど、なんとも心温まる優しい美味しさ。名物に旨い物なしの諺は、麦代餅においてはあてはまりません。ミニサイズもあるので、お土産にはこちらもよいでしょう。また、持ち帰る間に、きなこがしとっとしてしまいますから、持ち帰りの場合は、きなこを別にしてもらい、あとでかけるようにするとよいでしょう。