フードジャーナリストの小松宏子さんが、最新の食のトレンドを紹介します。 

せっかく京都を訪れたのだから、美味しいお土産を買って帰りたいもの。渡される側も、京都のお土産と聞けば、当然、美味しいものを期待しますよね。そう、京都土産は、他の都市に比べて2~3割ハードルが高いんです。そんな失敗できない京都土産の鉄板を、“ド”定番と、新顔の2回に分けてご紹介しましょう。
まずは、定番の鯖寿司、漬物、甘味。定番であればあるほど、京都に足を運ばなければ買えないものを選ぶことが大切、喜ばれる秘訣です。
 

いづ重 鯖寿司

 
 

京都に行くと食べたくなるものの一つが鯖寿司、ですよね? なぜ、京都で鯖寿司が食べられるようになったのかといえば、日本海側から京都まで鯖を運ぶ、鯖街道と言われる道があったからです。昔々は日本海の若狭や小浜から、京の都まで山を越えて鯖が運ばれてきました。ご存知の通り、鯖はとても足の早い魚。そこで、いたまないよう塩をして運んだわけですが、一日半ほどの道中でちょうどよい具合に塩をがなれ、塩鯖になったそうです。それをさらに酢でしめて締め鯖にし、寿司飯と合わせたのが始まりと言われています。
八坂神社の石段の下に店を構える「いづ重」は創業100余年。名店「いづう」からその昔に独立した老舗です。脂ののった肉厚の鯖と、きりっと酢をきかせた寿司飯とのバランスが抜群。一番好きな鯖寿司のお店です。なにしろ、ご飯はいまだに店内にあるおくどさん(かまど)で炊き、鯖を締める塩や酢の割合から寿司飯の配合まで、創業時から変わらぬ、秘伝のレシピを守り続けているそう。
普通の鯖寿司でも充分に美味しいのですが、特別な方へのお土産なら、「極上鯖寿司」を買うことを薦めます。「鯖そのものがまず、全く違うんですよ」とご主人も胸を張ります。現在は若狭の鯖の漁獲量が減り、対馬あたりで揚がる鯖を主に使うそうですが、極上鯖寿司に使う鯖は、その中でも格別に脂ののりがよいものだけが選びぬかれます。噛みしめるとまろやかな脂の甘みがじんわりと口に広がり、鯖寿司好きにはたまりません。
場所が便利なこともあり、京都旅行の最後に必ず買って帰るという人も少なくありません。帰りの新幹線の中でまず少し、家に帰って、楽しかった京都の旅を思い出しながらまた、楽しむ。そんな自分へのご褒美にも最高ですね。ちなみに、購入するときに、頼めば切ってもらえますが、切らないほうが日持ちはするそうです。すぐに渡せないときには、切らずに包んでもらってもいいでしょう。