天皇陛下は高御座(たかみくら)に、雅子さまは御帳台(みちょうだい)にのぼられて、豪華で美しいお姿を現します。まるで平安時代の物語から抜け出してきたかのような装束とおふたりの晴れやかなお顔に、国民はみな胸を熱くして見つめていました。

10月22日、即位礼正殿の儀が行われ、天皇陛下が内外に即位を宣言されました。その日、儀式に招かれた参列者のなかに、雅子さまのご両親の姿もありました。雅子さまを長年いつくしんで育ててこられたご両親の心の中には、きっと雅子さまとのさまざまな思い出がよみがえったことでしょう。

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即位礼正殿の儀に参列された小和田家の皆さん。写真/JMPA・講談社

雅子さまは、たくさんのご両親の愛を受けてお育ちになったのです。

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父と母の愛に包まれた暮らし


外交官だった父の仕事柄、外国暮らしが長かった雅子さま。たとえ海外に転勤になっても、家族が一緒に暮らすことを大事にされたお父さまのお考えによるものでした。
モスクワ、ニューヨーク……さまざまな国で暮らしていても、雅子さんは寂しいとお感じになったことはなかったでしょう。それは、ご両親の優しい気配りによるものでした。

ニューヨークで暮らしていた5歳のころ、幼い雅子さんに母の優美子さんがもっとも大切にしていたのは心を育てることでした。

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5歳。双子の妹達とニューヨーク郊外へドライブ。写真/宮内庁提供

毎晩、雅子さまが眠りにつく前には、優美子さんが本の読み聞かせをしてくれます。日本の祖母が送ってくれた童話全集を、ときに楽しく、ときにしみじみと読んでくれるのです。
なかでもとりわけ雅子さんが好んだのが『フランダースの犬』のお話です。なんど読んでもらっても、ネロ少年と犬が死ぬシーンになると、いつも胸がいっぱいになって涙ぐんでしまうのでした。

優美子さんは、海外暮らしが長くて日本の文化や心を忘れてはいけないと考え、お正月やひな祭り、七夕などの日本の年中行事は欠かさず行っていたといいます。

週末になると、父の恆さんはしばしばドライブに連れていってくれました。行く先は郊外の公園や動物園。そこで家族そろって楽しい一日を過ごすのです。
ときにはフィラデルフィアあたりまで足をのばすこともありました。

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1975年夏、双子の妹達と新潟県赤倉にて。写真/宮内庁提供

フィラデルフィアには、アメリカの独立の際の歴史的記念物がたくさん残されています。そうした生きた教材を前に、子どもの雅子さまにアメリカ独立の歴史をわかりやすく語ってくれました。

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