2019年も終わりに差し掛かったころ。ジェンダーギャップ指数の世界順位が過去最低を更新し、日本の女性が置かれた環境の変わらなさにガッカリしていた年の瀬に、伊藤詩織さん勝訴のニュースが飛び込んできました。
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんに性的暴行を受けたとする民事裁判で、12月18日、東京地裁は山口氏に賠償命令を命じる伊藤さん勝訴の判決を下した。写真:AP/アフロ
私は、性被害の訴えに対して、自分が女だからと無条件に常に女性側を支持するというわけではありません。本件に関しては、ジャーナリストである双方が書いたものも読んでいて、レイプドラッグ使用の有無などについてはどちらが事実に沿った主張をしているのかは不透明だなと思いました。
でも、加害者側は当初被害者へのメールで主張していた「(彼女の方から)半裸で自分のベッドにもぐりこんできた」との説を裁判の過程で修正しており、自分がベッドを移ることで性行為に至ったことを認めています。それを踏まえると、積極的に同意があったと考えるのには無理があると感じました。
この「無理がある」は私の感覚です。加害者やその支持者からすれば、その感覚が理解できないのかもしれません。泥酔した女性の様子を見て、本気で同意があったと捉えるのであれば、そこには「男性と2人きりで酒を飲んだら性行為をされても仕方ない」「就職の紹介をお願いした女性は身体を差し出すくらい当たり前だ」といった認知の歪みがあるのではないでしょうか。加害者側が本気でそう考えているのであれば、実はこれは根深い問題ではないかと感じます。
昨年11月に日本の性犯罪を考える上で非常に示唆的な本が出ています。精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんによる『「小児性愛」という病―それは愛ではない』です。斉藤さんの著書は『男が痴漢になる理由』も目からうろこの知見が多かったのですが、『「小児性愛」という病~』は小児性愛に直接関係しそうにない人にも広く読まれるべき非常に重要な本だと思います。
教師によるわいせつ事件などのニュースが相次ぎ、一体日本はどうなってしまったのかと思っていた矢先にこの本を読んだのですが、加害者の治療に携わる著者がこれまでのヒアリングやデータをもとに論じるのは、まず小児性愛加害者には衝撃的なまでに認知の歪みがあり、性愛嗜好を実現するために自分自身の行為を正当化していくということです。
被害者は恐怖でフリーズしているだけなのに、それを「受け入れてくれている」と考える、最初は痛がったり嫌がっていてもだんだん気持ちよくなるから大丈夫……。そういった認知の歪みは、小児性愛に限らずありそうです。さらに小児性愛の場合はこれに輪をかけて、被害者が何をされているのかわからない、言えないように口止めされやすいなどの特徴があり、そして加害者側に再犯が多く、場合によっては長期の目的達成のために教師など子どもに接することができる職業に就いているなど、子どもを持つ親としては恐ろしい現実が描かれています。
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