こんにちは、編集・川端です。クリスマスから年末年始にかけては、歌番組が目白押しですね。歌番組好きな私、FNS歌謡祭、CDTV、Mステと完走し、紅白ももちろんリアルタイムでばっちり全視聴しました。Twitterの反応を同時に追いながら……「いやあ、菅田将暉くんよかった」、「不協和音のてちは神がかってたね」などと知らない人と感想を分かち合う……新しいお茶の間のあり方だなあと思ったり。皆さんもご覧になっていましたか。
今回の日本レコード大賞と紅白歌合戦で一番印象に残ったのは、氷川きよしさんのパフォーマンスと司会の方のコメントでした。「カミングアウト」というのともちょっと違う感じでしたね。単に、もともと好きだったもの、大切にしていた美意識を積極的に出していこうっていうことなのかなあ。それを「かっけぇ」って感じで紹介する番組の感じも良かったです。
日本もきっとこれからはどんどんそうなっていくんだろうな、と2020年への期待が持てました。
さて、お待たせしました。2019年のベストブック、2位と1位の発表です。
第2位は、綿矢りささんの新境地を感じる渾身の長編『生(き)のみ生のままで』。

主人公は、都内の携帯電話ショップで働く逢衣(あい)と、芸能界で活躍する彩夏(さいか)。お互いの彼氏と訪れたリゾートホテルで出逢った25歳の瞬間から、惹かれ合い付き合い始める<上巻>、そしてある事件をきっかに破綻し、7年の空白の時を経て再会してからの<下巻>と、20代から30代にかけての長いスパンで二人の関係が描かれます。
そっか、女性同士の恋愛かあ。綿矢さん、なるほどそう来たかー、と思いました。
綿矢さんの20代の頃に書いた小説『ひらいて』でも、好きな男の子の気を引くために交際相手の女の子を誘惑し、相手の女の子が本気になってしまう……という物語を書いていて、すでにその片鱗は見られていましたが。
綿矢さんも35歳。いつまでも“思春期の揺れる感情を繊細に描き……”という若手女性作家ゾーンにもいられない。あまり多作な印象ではないし、どういうものを描いていく作家さんになっていくのかなあと気になっていました。『蹴りたい背中』で19歳の史上最年少で芥川賞を受賞し、注目もプレッシャーもあって書けなくて苦しい時期があったとなにかのインタビューで読んだ記憶があります。
同世代の島本理生さんは、2018年に『ファーストラヴ』でついに直木賞を受賞。島清恋愛文学賞を受賞した『Red』は今年映画公開予定、『ファーストラヴ』は2021年に(北川景子さん主演・堤幸彦監督・浅野妙子さん脚本)で映画化と、『ナラタージュ』あたりからの濃厚で破滅的な恋愛ものの筆が波に乗って今ビッグウェーブとなってきた!という感があります。
柚木麻子さんも38歳。すでに五回も直木賞候補になっている柚木さんですが、『ナイルパーチの女子会』や『デートクレンジング』のような女友達のあれこれを得意としながらも、長篇『BUTTER』では、木嶋佳苗をモチーフとした事件小説に取り組んだり、得意を生かして違うジャンルにチャレンジしているんだろうなあと思います。
同世代か少し下くらいの女性作家さんが「脂がのってきた〜」という感じがするのは、同級生の活躍を見るようですごく嬉しい。
『生のみ生のままで』は、そういう意味で綿矢さんが違うステージへ向かう新境地。渾身の、全体重を乗っけて書いたぞ、どうだ!と世に問い、これで違うなら砕けてもいい!という覚悟を感じる作品でした。
繊細な感情の揺れ、ぶつかりあう感情、初めて結ばれる瞬間、周囲の反対……ストレートな恋愛ものを今描くにあたって、女同士という設定がすごく生きていると思いました。
面白いなと思ったのは、彩夏(さいか)は芸能人なわけなのですが、女同士なら、二人で歩いていても、同じマンションから出てきても、写真週刊誌的なスキャンダルにはならない。仲がいいんだろうな、くらいにしか思われない。弊社「FRIDAY」もネタにしないでしょう。
小説では、それ以上踏み込んだ報道されてしまいスキャンダルへと発展するのですが……。
でも、これを読んで、同性のパートナーがいる女優さんや著名人は、実は少なくないんじゃないのかなと思ったりしました。
「いくら世間の気に入るように生きてみても要求されるフツウの条件は増える一方」
そこに合わせて応えようと頑張り過ぎなくていいのではと、自分でも思ったと答えています。
フツウってなんだろう。フツウの条件も、綿矢さんの作品などのおかげで広い解釈のほうに変わっていくのかもしれませんね。
さて、続いてようやく第1位です。
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