中途採用比率の公表義務化で日本の雇用は変わるのか_img0
 

政府が企業に対して中途採用比率を公表するよう義務付ける方針であると報道されています。中途採用を促し、就職氷河期世代や高齢者らの雇用を増やすことが目的ですが、効果はあるのでしょうか。

 

戦後の日本企業は、終身雇用、新卒一括採用という制度を維持してきましたから、諸外国と比較して中途採用が少ないといわれています。このため、新卒時に就職活動に失敗した人や、途中で企業を辞めてしまった人が再就職するのは容易なことではありませんでした。

近年は中途採用もだいぶ増えており、以前ほどではなくなりましたが、中途採用に大きなカベがあるのは事実です。トヨタ自動車は中途採用の比率を3割に引き上げ、最終的には5割にする方針を明らかにしていますが、トヨタのように大きな決断ができる企業はまだ少数派といってよいでしょう。

政府はこうした事態を打開するため、従業員301人以上の企業に対して、直近3年分の比率公表を義務付けるというプランを検討しています。大企業に的を絞っているのは、大企業ほど中途採用に消極的というのが現実だからです。企業にもよりますが、中途採用比率は一般的に企業規模が大きくなるほど減少していきますから、中途採用に消極的な大企業に対して積極採用を促そうというわけです。

大企業は世間体を気にしますから、もし比率公表が義務付けられれば、ある程度、中途採用は増加するものと考えられます。その点においては、このプランはそれなりに成果を上げるのではないかと筆者は考えています。

ただ、このような形で中途採用を増やせばすべて問題が解決するというのは幻想でしょう。その理由は、現時点において大企業が中途採用に消極的という状況そのものが諸問題の根源となっているからです。

 
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