「稼ぐために」時間を使うことへの疑問


40代に突入した頃に訪れるといわれる「中年の危機」。
仕事と生活のバランスに悩んだり、夫婦生活に疑問を感じたりと、「危機」の種類はさまざまなようですが、そんなミッドライフ・クライシスを機にビジネスの世界から足を洗い、「トイレ」を世界に広める活動をしている人がいます。

「中年の危機」をきっかけに「トイレ」で世界的社会活動家になった男性の話_img0
爽やかな一枚ですが、シムさんが手に持っているのは「尿瓶」です。

現在、世界中の人々から「ミスター・トイレ」と呼ばれ称賛を浴びているシンガポール人のジャック・シムさんは、「WTO」を立ち上げた人物。といっても「世界貿易機関」の方ではなく、「世界トイレ機関」です。

 


「なんでトイレ?」とピンとこない方も多いかもしれませんが、著書『トイレは世界を救う ミスター・トイレが語る 貧困と世界ウンコ情勢』によると、世界の約42億人、つまり全世界の半分の人々が衛生的なトイレが使えない状況にあるといわれています(調査はユニセフのもの)。温かい便座にウォシュレットまでついているトイレが当たり前の日本からすると、驚きですよね。

とはいえシムさん自身も昔からトイレやその普及に興味があったわけではなく、社会活動家になるまでは弱肉強食のビジネスの世界で辣腕を振るい、40歳までに16もの会社を立ち上げてきました。

「4人の子宝に恵まれ、尊敬できる妻もいる。でも、自分の貴重な時間を今後ずっと稼ぐために使うことはいかがなものか……」

ふと今後の人生を考えた時、シムさんはこんなことを思ったそうです。
その時、シムさんの心を射止めたのが……「社会への貢献」でした。