写真:松尾/アフロ

経済産業省がコンビニの24時間営業について柔軟な対応を求める提言を行ったり、ファミレスのすかいらーくグループが24時間営業の全店廃止を表明するなど、営業時間短縮の動きが活発になっています。顧客の利便性と労働者の雇用環境についてはどう考えればよいのでしょうか。

 

コンビニ業界ではこれまでほぼ画一的に24時間営業を行ってきましたが、最大手のセブン-イレブンの加盟店が、深夜営業をめぐって本部と対立したことをきっかけに、24時間営業の是非が国民的な議論となりました。

意外に思うかもしれませんが、コンビニが24時間営業を行ってきた理由は、深夜の売上高が欲しいのではなく、かき入れ時である昼間の時間帯の売上高を伸ばしたいからです。

24時間営業を行ったケースとそうでないケースを比較すると、24時間営業を実施した方が昼間の売上げが大きく伸びることが分かっています。はっきりとした理由は不明ですが、いつでも開いているという安心感が利用者の中に生まれ、来店頻度が上がることが原因のようです。これに加えて、深夜のうちに弁当などを準備しておかないと、朝の売上げが大きく落ち込むことも24時間営業を続けていた理由です。

朝、会社に行く前にコンビニに寄って、サンドイッチなどの朝食を購入する人も多いと思いますが、朝はコンビニにとっても重要な時間帯です。ところが、朝の時点で新鮮な食品が少なかったり、棚に商品が揃っていないと、朝の売上げが大幅に減ってしまうのです。仮に深夜営業をやめ、午前6時に店を開けるにしても、午前3時頃には商品を配送し、棚に並べる作業を開始しなければ、開店の段階で新鮮な食品を揃えておくことは不可能です。

繁華街の一部を除き、深夜のコンビニに来店する客は極めて少なく、午前2時を回ると店員さんの仕事は、ほとんどが商品棚の整理や食品の受け入れ、陳列といった朝の準備に費やされます。どうせ人を雇って作業をするなら、店を開けておいた方が、ごくわずかですが来店もありますし、昼の売上にもつながることから、24時間営業が継続されてきたのです。

人間の心理というのは非常にわがままで、24時間営業についてどう思うかと聞くと、ほとんどの人が「無理して店を開ける必要はない」と答えます。しかし現実の行動はまったく正反対で、朝の段階でフレッシュな商品が少なかったり、商品に欠品があったりすると、その店には二度と来てくれなくなるのです。

 
  • 1
  • 2