こんにちは、編集・川端です。
疲れた時は「読まない読書」で心のリペア」にも少し書いたのですが、買ったのに(そして面白く途中まで読んでたのに)読み終えられない本が結構あります。読了できないと罪悪感みたいなのがありますね。作品のせいじゃなくて、ほとんど自分のコンディションのせいかなあ。土日が忙しいとか心の余裕がないとか、そういう気分じゃないとか。

そんなわけで、分厚い単行本を買うときは、「あたし、これちゃんと最後まで読めるのかしら」というプレッシャーが結構かかります(汗)。マラソンに挑むときや、ヨガレッスンで難易度の高いクラスの予約をするときのような……。

湊かなえさんの書き下ろし長編ミステリー『落日』は、持った時点で「お、これはなかなかのボリューム……」というプレッシャーが。

しかし、1ページ目を読み始めたら「これはイケる!」となって、3日間くらい肌身離さずな感じで持ち歩きながら一気に読み終えたのでした。

買った時点では、直木賞候補だったんですが、残念ながら今年の直木賞はとれず。この『落日』でとってほしかったな〜と読んで思いました。(初候補となった川越宗一さんの『熱源』が受賞しました)。

他の候補の作家さんも初エントリーで、湊かなえさんだけはなんと4度目の候補。最初に候補になった『望郷』と2度目の候補『ポイズンドーター・ホーリーマザー』もすごく面白かったけれど、短編集、オムニバス形式だったので、受賞は難しいのかなと思っていて。今回のような“渾身の長編”でとってほしかった気持ちもファンとしてありました。

短編集だと直木賞はとれないということはないみたいです(今は選者側の浅田次郎さんの直木賞受賞作『鉄道員(ぽっぽや)』は短編集ですね)。

さて、『落日』は、新人脚本家の甲斐千尋が、新進気鋭の映画監督・長谷部香から「15年前に起きた一家殺害事件を題材に新作映画を撮りたい」と相談を受けたことから事件の真相に迫るミステリーです。

告白』や『贖罪』などの流れを汲んだ「過去に向き合い、過去の罪や思い込みの真相を知る」というタイプの物語。章ごとに語り手や視点が切り替わる、乗り物 “ティーカップ方式”で(←と私は勝手に呼んでいるのですが、遊園地のアトラクションのティーカップってこっちに進んでると思ってたのに、くるんと方向転換して視界が変わりますよね)、読者の期待や予想をクルンクルンと裏切りながら進んでいきます。

もうこれは湊さんの真骨頂というか、特技全部盛り!みたいな作品です。

たいてい、本を買う時点で上のようなあらすじを読んでから、展開を予想しながら読み始めますよね。

プロローグで、母親のしつけが虐待であったかという回想、マンションの隣の女の子の思い出などが唐突に語られます。それが、脚本家の側なのか、映画監督の側なのか、はっきりわからないまま、1章でバツっと場面は変わって、おそらく脚本家側の今の日常の話へ飛びます。この、誰の話なんだろう? いつの話なんだろう? この話どこへいくの? っていう説明があまりないまま、どんどん視点が変わっていく、読者への“Sっ気”が湊かなえさんの作品の魅力の一つな気がします。

「イヤミスの女王」などと称される湊さんですが、その“イヤ”な後味は、自分の予想によって、自分の嫌な部分に気づいちゃうから、なんじゃないかと思います。人ってこんなに残酷になれるんだということに驚きながらも、さらに残酷な展開に期待しちゃう自分がいるという。

 

 『落日』を読んだら、もう一度『告白』が読みたくなって。でも手元になかったので、Amazonプライムで映画の『告白』を見ました。やっぱり松たか子さんてすごー!とひとりごちたのでした。

春の夜長に至極のミステリーをぜひ!

ではではまた〜。