僕にとっては顔も体も“商品”でしかない
 

名うての彫刻家が己の美意識と技術のすべてを注いでつくり上げた芸術品のように端正なマスク。男女問わず思わずため息をこぼして見とれてしまいそうな筋肉美。誰もが羨む美貌を持ちながら、新田さんは決してそこに拘泥はしていません。

「僕にとっては、顔も体も“商品”。だから特別、何も思っていないんです。ちゃんと“商品”として提供できるようメンテナンスをしているだけです」

世間からの熱視線にも新田さんはあくまで冷静です。

「外見は、ひとつの武器ではあると思います。だから外見に対してみなさんにどうおっしゃっていただいても構いませんが、そこだけで自分を終わらせるつもりはないです」

俳優・新田真剣佑の頭の中を占めるのは、いつも「お芝居」のことだけ。まるで自分の手中におさめることのできない「お芝居」が、新田さんの心を掴んで離しません。

「まだ自分の芝居がどう成長したかという手応えは何にもないです。ずっと芝居に没頭しているから、自分ではまったく気づけない。逆に聞きたいぐらいです、今の僕の芝居がどう映っているのかを。やってもやっても、芝居は難しい。芝居について考えることが多すぎて、他のことは頭に入らないんです」

 

今回、新田さんが演じるのは、少数民族のタバラ族が暮らす地に流れ着いた記憶喪失の青年・シャチ。役柄にちなんで、忘れたい記憶を聞くと、新田さんは迷う素振りも見せずにこう答えます。

 

「あのときこれができなかったとか、あのときこれが悔しかったとか、喜びも苦しみもすべてが芝居の糧になる。何かひとつでも記憶が欠けたら、この芝居ができなくなると考えると、すべて覚えていたいんですよね。だから、忘れたい記憶は何もないです」

そう言い切った瞬間、目に映る人すべてを吸い込んでしまいそうな大きな瞳が、一層澄んだように見えました。

「自分がこの世界に入ったのも、お芝居というものに夢を与えてもらったから。だから自分も同じように観ている人に夢を与える芝居ができればと思っています」

現在23歳。いつか40代になったとき、この美しき青年はどんな俳優になっているのでしょうか。そう最後に尋ねてみると「せめて週2でオフがもらえるようになっていたいです」と茶化したあと、再び真剣な光を瞳に宿らせて、こう宣言しました。

「日本を代表する役者になりたいです。そのためにも、日本とアメリカ、両方で活躍できる俳優になりたい。と言っても、まだ23歳の若造が言える言葉じゃないので、また40歳になったら改めて聞いてください(笑)」

 

そうくしゃっと笑った横顔は、イタズラっぽい23歳の青年そのものでした。40代まであと17年。そのとき今度はどんな答えをくれるのか。将来の楽しみにとっておきたいと思います。
 

<公演情報>
ダイワハウスSpecial 地球ゴージャス二十五周年祝祭公演
『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』

 

作・演出:岸谷五朗
演出補:寺脇康文
主題歌:EXILE「愛すべき未来へ」
出演:新田真剣佑、笹本玲奈/松本利夫(EXILE)、湖月わたる、愛加あゆ、島ゆいか/森公美子/岸谷五朗・寺脇康文 ほか

<東京公演>
2020年3月10日(火)~4月13日(月) @舞浜アンフィシアター
<大阪公演>
2020年5月3日(日・祝)~5月14日(木) @フェスティバルホール

撮影/赤松洋太
ヘアメイク/粕谷ゆーすけ(ADDICT_CASE)
スタイリング/櫻井賢之(casico)
文/横川良明
構成/山崎 恵(編集部)
 
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