写真家、映画監督として女性たちの生き方をヴィヴィッドに切り取ってきた蜷川実花が手がけるNetflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS(フォロワーズ )』。気鋭の写真家として第一線を走り続けているリミと、女優を夢見て上京したもののなかなか芽が出ないなつめ。東京で生きるふたつの世代の女性たちのライフスタイルを描くこのシリーズで、中谷美紀さんはリミを演じています。

*こちらは「2020年人気インタビュー20選」です。元記事は2020年2月21日に配信しました。

 

中谷美紀 1976年、東京都生まれ。93年に女優デビュー、以降、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。映画『嫌われ松子の一生』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。舞台『猟銃』で紀伊國屋演劇賞個人賞、『ロスト・イン・ヨンカーズ』で読売演劇大賞最優秀女優賞受賞。近年の出演作に『あなたには帰る家がある』『ハル〜総合商社の女』。現在、ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』に出演中。

 


役を通して吐露する意外な胸の内


まず目を引くのは、金髪のマッシュというこれまでの中谷さんのイメージを鮮やかに裏切るようなヘアスタイル! 
「人は誰しも変身願望があると思いますし、何か仮面をつけることによって自分を解放することができたりしますよね。恐らくハロウィンであれだけ多くの方々が仮装なさるのも、その一環だと思いますし、私たち演じる側も衣装やヘアメイクによって心のあり様が変わったりします。今回リミという写真家を演じるにあたって金髪のマッシュルームにしたことで、今までの自分とは異なるリミという人に導かれたように思います。

一方で実はメイクは究極の引き算をしていただいたんです。金髪のマッシュルームのヘアスタイルで、普通だったらドラマや映画では貸していただけないような特徴のあるハイブランドのお洋服をたくさん着させていただきました。ヘアスタイルと衣装で、すでに足し算、掛け算ができていましたので、メイクでは引き算ということを心がけました」

 

セレブリティを被写体に、華やかな世界で生きているリミ。そのライフスタイルを表層的になぞるのではなく、裏側にある孤独や戦い、まだ何者でもない女の子へのエールが描かれています。
「リミはとても成功していてきらびやかな世界にいます。錚々たるスターを被写体として、自分の好きなように自分の道を切り開いてきた人間ではあるけれども、やはり若かりし名もなき頃は、男性社会において、若い女性がカメラマンとして自立していくためにとても苦労をしてきた人でもあります。
ですから人間の一面だけではなく、血のにじむような努力をして、今のきらびやかな世界があるということがお伝えできているのかな、ということを意識していました。とても華やかな衣装を着て、華やかな内装のお家に住んでいるけれども、その一方でスーパーの納豆巻きを食べるような庶民的な部分もある。人間の多面性を描けたのではないかな、と思っています」

『FOLLOWERS』より
『FOLLOWERS』より


そして中谷さんは「この作品に携わって反省すべきは、なつめやリミほどのガッツが私にはなかったな、ということです」と意外にも思える胸の内を語ってくれました。
「何か夢をつかみ取ろうと必死でもがいたというよりは、いつの間にか流されてこの場所に辿り着いてしまったという感じで、若い頃にはやる気がなくてよく怒られていましたし、本当にいつもやめたいと思っていました。恐らく同業の女優さんたちと比べても休みを多くとっていたと思います」


そんな中で、女優として大きな転機を二度経験したといいます。
「中島哲也監督の『嫌われ松子の一生』では毎日罵声を浴びせられ、ーーそれは自分自身が監督のお望みに至っていなかったからなのですがーー、ありがたくも厳しいご指導をいただいたお陰で、ある意味では役柄を捨てていくことを知ったと言えるかもしれません。それまではひとつの役柄に没入するタイプだったのですが、自分自身のプライベートと役柄を切り離す作業ができるようになりました。あとは2011年に『猟銃』という作品で初舞台を踏ませていただいた際に、演出家のフランソワ・ジラールさんから“演じるというのは英語でplay”、フランス語では“jouer”、これはいずれも遊ぶという意味を兼ねる。つまり演じることは遊ぶことなんだよ”と教えていただいたことが転機になっています」

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