写真:AP/アフロ

新型肺炎の感染拡大に伴って、一部から政府機関の対応について批判する声が上がっています。非常時にリーダーシップを発揮できる人材が適材適所に配置されていないことが原因ともいわれますが、今後、感染が長引けば、企業においても普段とは異なる対応を求められるケースが増えてくると予想されます。非常時に適切に対処できるリーダーというのはどのような人材なのでしょうか。

程度の違いこそあれ、今回の新型肺炎における政府の対応が、後手に回っていることは多くの人にとって共通認識だと思います。最終的には首相を中心とした政治家のリーダーシップという話になるのかもしれませんが、総理大臣が現場の細かいところまで指示できるわけではありません。もっとも大きいのは、各機関の現場責任者の問題ということになるでしょう(首相などトップマネジメントの評価はその後です)。

IT大手のGMOインターネットは、国内での感染がそれほど騒がれていなかった1月26日の段階で、すでに国内従業員の約9割にあたる4000人を在宅勤務に切換え、2月7日には感染長期化を見越して、在宅勤務を延長する決断を行っています。こうした迅速な対応が実現できた背景には、創業社長である熊谷正寿氏の強いリーダーシップがあったことは間違いありませんが、それだけが理由ではありません。

同社では、非常時における事業継続の重要性という観点から、毎年、定期的に在宅勤務の訓練を実施してきました。こうした地道な積み重ねがあってこそ、非常時にもスムーズに事態に対処できたわけです。さらに言えば、同社では、普段の業務についても、意思決定のプロセスや組織への伝達方法、結果に対する責任の取り方などが、明確であったと考えられます。

日常業務をしっかり処理できない組織が、非常時に高い能力を発揮することは通常、あり得ません。非常時にしっかりとした対応を行うためには、日常業務を着実にこなし、かつ、相応の準備をしておくことが重要です。逆に言えば、これができていない組織の場合、非常時にも適切な対処はできません。

人材についても同じことが言えます。

非常に厳しい言い方になるかもしれませんが、人材というのは、大きくわけて3つのタイプしかいません。ひとつめは、普段の地味な仕事をしっかりこなすことができ、かつ非常時にも行動力を発揮する人、ふたつめは非常時にはあまり頼りにならないものの普段の仕事はしっかりとこなせる人、三つ目は普段の仕事もだらしなく、非常時にも行動力を発揮できない人です。残念ながら、普段はだらしないものの、非常になると卓越した能力を発揮するという人は現実にはほとんど存在しないと思ってよいでしょう。

 
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