「お金のプロの方は、お金についてどんなふうに考えているの?どうつきあっているの?」というミモレ編集部の疑問から生まれたインタビュー企画。マネー業界のトップの方々に「お金の価値観」についてじっくり伺っていきます。

今回ご登場いただくのは、マネーフォワード代表取締役社長CEO辻庸介さん。便利なお金の見える化サービス「マネーフォワード ME」を使っている人、または気になっている人も多いのでは? マネーコラムニストの西山美紀と編集部の片岡がお話を伺いました。

<今回お話を伺ったのは……>

 

辻庸介さん
マネーフォワード代表取締役社長CEO。京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワード設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員を歴任。個人向けのお金の見える化サービス「マネーフォワード ME」およびバックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」を提供中。著書に『FinTech入門』(日経BP社)。

 


プロもこぞって使っている「家計簿アプリ」とは?


――当連載でもときどき紹介させていただいている、家計管理サービス「マネーフォワード ME」。私自身も使っていまして、お金のプロに取材をすると、便利なアプリとしてよく話題にのぼるんですよ。

辻庸介さん(以下敬称略):うれしいです、ありがとうございます。僕自身が、お金に関する面倒くさいことを、全部自動化できたらいいなと思って始めたサービスなんです。

新卒のサラリーマン時代、休日にいろいろな銀行口座や証券口座のサイトにログインして残高を確認したり、エクセルにまとめたりして、もう面倒でたまらなくて……(笑)。テクノロジーを活かして自動化できたら、自分の時間も増えて楽しいだろうなと思いました。

お金に関することは学校で学べたらいいのですが、なかなかその機会がありません。家庭教育が基本になり、人によって知識や行動に大きな差があるんです。

でも、テクノロジーを使えば、知識や時間がなくても、自動で誰でも簡単に家計簿がつけられるし、資産管理ができます。他にも「しらたま」という、「知らずに貯まる」が由来の、自動で貯金ができるサービスもあるんですよ。面倒なことは、とにかく自動化させてしまおう!と。

――忙しい時代、自動化できると本当に助かります。

 

辻:前職はネット証券に勤めていたのですが、テクノロジーの可能性をものすごく感じました。ネット証券が出る前までは、株式取引は対面か電話だったんですよね。ネットが使えるようになって、コストは10分の1以下になった。リアルタイムで取引でき、世界中の投資情報が瞬時に入ってくる。機関投資家が持っているような情報が手に入ったり、ツールとして使えるようになったんです。

今や、9割以上の株式取引がネットになっています。そうした歴史を見ているので、テクノロジーで私たちの生活がもっとよくなるといいなと考えて起業したのがマネーフォワードという会社です。

証券会社の口座を開く人は、まだまだ少ないのですが、証券会社までたどりついていない多くの人に使っていただけるサービスって何があるだろうと考えて生まれたのが、家計管理サービスなんです。

――これまでの「紙の家計簿」では、多くの人が面倒になってやめてしまっていました。失敗経験のままだともったいない……。

辻:はい、本来、家計簿は「つけるだけ」でも「お金」の大きな改善がみられるんですよね。レコーディングダイエットと似ているかもしれません。最近僕、太りすぎて(笑)、体重計とスマホアプリが連動するものを使っているのですが、“見える化”するだけで意識が変わります。

なんとなく使っていたお金でも、具体的な金額として確認できるようになると「お金の使い方を変えた方がいいな」「家族で使えるように、もっと貯金しようかな」と行動に移すようになる。

僕は、「節約だけ」というのは嫌なんです。お金は楽しく使った方が、やっぱりいいじゃないですか。

――わかります。この連載も「ひたすら節約」ではなく、「楽しく使うために、お金と賢く使う」という方向を目指しています。

辻:大事ですよね。好きな洋服を着て、生き生きしていたほうがいいですから。(小声で)本当はマネーフォワードMEに、「使ったお金の満足度を入れる指標」をいれたいと開発チームに伝えているのですが、なかなか採用されなくて(笑)。100円使っても満足度が低い場合と、1万円でも満足度がとてもよかったという場合がありますよね。

人生の満足度を最大化させるお金の使い方ができたら、一番いいなと思っています。

 
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