「雑誌「ヴァンテーヌ」がもし、2020年にあったなら?」という記事にたくさんの反響コメントを頂いております。ありがとうございます!

大草ディレクターの先々の特集を相談しているときに、秋頃だったのでしょうか、やってみようかということになりました。いまだにファンの方が多いだけに「勇気がいるよね~(笑)」と思いながら。

休刊になって10年以上経ってもなお人の心をこんなに熱くさせる「ヴァンテーヌ」とは何だったのか。いま「ヴァンテーヌ」を取り上げる意味は何だろう。

「ヴァンテーヌ」を読んでいた人はもちろん、読んでいなかった方にも読んで頂ける記事になること。そこを大切にしなければ。そう思いながら企画をスタートさせました。

実を言うと私が「ヴァンテーヌ」を読みだしたのは、1999年に講談社に入社してからなんです。配属された「FRaU」でファッション班に配属されていわゆる〝競合誌〟として読むようになったんですね。「ヴァンテーヌ」のブレない世界観、ファッション理論、おしゃれを通じて生き方を説く姿勢、ずっと心にしまっておきたくなるような熱くきらめく言葉の数々。駆け出しの編集者から見る「ヴァンテーヌ」は美しい城のように気高くそこに立っていて、その隙のない雑誌作りからいつも学ばせて頂いていました。

でもなぜ、私は入社する前「ヴァンテーヌ」を通ってこなかったんだろうと思って考えたのですが、学生時代はTVドキュメンタリーのディレクターと雑誌編集の両方に興味があって、主に新聞や「AERA」などの週刊誌や「COSMOPOLITAN」を読んでいたんですね。頭でっかちで今思い出しても恥ずかしいあの頃(汗)。

ヴァンテーヌの創刊は1989年、私は中学1年生で、愛読していたのは「mcSister」でした(笑)。この年の初めに昭和天皇が崩御され、平成の時代が始まった直後に中学受験を経験。中学入学直後に中国で天安門事件が起き、ベルリンの壁は崩壊し、東西冷戦が終結…いま振り返ってもなんという1年なんでしょう。忘れられません。
「ヴァンテーヌ」創刊号の巻頭は「新しい時代のクラスカジュアル」。「婦人画報」でも「25ans」でもない「普通でありながら、どこか違う感覚と存在感」を持った女性像をミラノに求めたものでした。
巻頭ページのクレジットに光野桃さんのお名前を発見! 1年間連載を担当させて頂いた光野さんの30年前の原稿に触れて震えました。今と変わらず細胞を覚醒させる光野さんの文章…(涙)。
「何かに追い立てられるように、たくさん買って、でも自分のスタイルが見つからないし、ちょっと疲れ気味ーー」。バブル真っ只中のこの時、浮わついた世の中と一線を画すように「普通の服をおしゃれに着る」ヴァンテーヌスタイルは生まれたんですね。
今回の特集掲載にあたって、ハースト婦人画報社様に担当のミカヅキとお邪魔し創刊号の「ヴァンテーヌ」から見せて頂きました。ハースト婦人画報社様の寛大さに感謝…!
石倉和夫さんの写真。素敵ですよね〜♡ もちろんフィルム時代です。

 

 

創刊から数年後には「ヴァンテーヌスタイル」を決定づける「甘辛バランス特集」が登場。おしゃれにおける甘辛理論は、「ヴァンテーヌ」の発明だったんですね…!!そのときの雑誌も見つけましたが、詳しくは第二回以降の特集記事に譲ろうと思います。

白シャツやカシミヤのニットや紺ブレなど、普通の服をおしゃれに着る「ヴァンテーヌスタイル」は、現在でも十二分に通用するもので、「おしゃれの教科書」としては、今なお他の追随を許さないものがあります。

そしてこれは「スタイルのあるおしゃれ」「サステナブルなおしゃれ」が求められる今の時代に、また新しい気持ちで受け入れられるべき価値観でもあるように思えます。「ヴァンテーヌ」を読んでいた人にも読んでいなかった人にも、今改めてこの特集を届けたいと思ったのはそんな理由です。

もう一つ。「ヴァンテーヌ」が多くの人の心を捉えたのは、「おしゃれを考えることは、生き方を考えること。そして、それは誰かが決めてくるものではなく、自分で決めるもの」と毎号繰り返されたメッセージなんじゃないかな。

休刊して10年以上だった今でも、こんなにたくさんの人の胸を熱くさせるなんて本当に凄いことですよね。ちなみにミモレ読者の方は何年代の「ヴァンテーヌ」を何歳くらいの時に読んでいましたか? よかったら教えてください!

しかし雑誌研究ってやはり楽しいです。好きだった雑誌を持ち寄って集まったら何時間でも話せそう。いつかやってみます??

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