2017年から約2年にわたって『婦人公論』で連載された窪美澄さんの小説『たおやかに輪をえがいて』。
本作は、我慢強く内向的な専業主婦・絵里子が、50代になって夫の風俗通いを知ってしまったことを機に、整形と同性愛をカミングアウトした女友だちや乳がんの老女など、さまざまな女たちの生き方にふれ、新たな道を切り拓いていく物語です。
現在54歳の窪さんは主人公の絵里子と同世代ですが、平穏な暮らしをしてきた彼女とは裏腹に、学生時代には父が自己破産し短大を卒業できない憂き目に遭い、夫と離婚してシングルマザーとなり、学費捻出のために小説家としてデビューするなど、波乱万丈な人生を歩んできました。
そんな窪さんに、このたび単行本化された“主婦覚醒小説”と、50代の愉しみについて聞きました。
窪美澄:1965年生まれ。2009年に『ミクマリ』で作家デビュー。2011年、『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞を、2019年、『トリニティ』で織田作之助賞を受賞。『やめるときも、すこやかなるときも』が現在、日本テレビにて放送中。
性欲に惑わされる40代。50代は……
――本作の着想はどこから得たのでしょうか。
ゆるやかに人生は結んでいく方向にありつつも、老いというにはまだ早い。そんな時期の女性の物語を書いてみようと思ったんです。
また、主人公の絵里子は長女で、親にも本心を言わずじっと我慢するような人ですが、長女って、それまで大事にされていたのに、妹弟ができるとないがしろにされがちで、内にため込む人が多い気がします。
私も長女で、絵里子ほどではないにしろ、言いたいことを言えなかったり、「私なんか……」と自虐マウントをしてしまうことはよくあって。そういう意味では“長女小説”でもあり、「皆さんにもこんなところ、ないですか?」と思いながら書きました。
――50代女性の身体の変化や、セックスという意味の“性”、また実父の死や老いていく母、乳がんの女性などから“生”も考える内容になっていました。窪さんは、50代になって性や身体にどのような変化を感じていますか。
40代ってまだまだ性欲に惑わされる時期だと思うんです。体力もありますしね。でも50を過ぎたら、自然に軟着陸していく。こう言うと勘違いされそうですが、従来、性欲が強かったというわけではありませんよ(笑)。
それと同時に生理が収束していって、悩まされていたPMS(月経前症候群)からも解放されるようになりました。私は更年期の症状も今のところ出ていないので、ホルモンに惑わされるということがなくなり、身体が本当に楽になりました。
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