#MeToo運動から始まるここ数年のフェミニズムの動きは、多くの女性が自分のこれまでの人生を見つめ直す大きなきっかけとなったことでしょう。そうした女性たちの変化を、性差別が今よりずっと当たり前だった時代から闘ってきたフェミニストたちはどのように捉えているのでしょうか。
ミモレでは、女性活躍をはじめとしたダイバーシティ推進のためのイベント『MASHING UP(マッシングアップ)』に登壇した、社会学者の上野千鶴子さんにインタビューしました。

 

上野千鶴子 Chizuko Ueno 社会学者、東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究で、この分野におけるパイオニアの一人。『近代家族の成立と終焉』(1994年、岩波書店)でサントリー学芸賞を受賞。近著に『上野千鶴子のサバイバル語録』(2019年、文春文庫)『女ぎらい ニッポンのミソジニー』J(2018年、朝日文庫)などがある。

 

声を上げるハードルが下がるほど批判や攻撃も増える


この日のセッション『「女性活躍」はキモチワルイ?– 新しい言葉をみつけよう』には、上野さんのほか、女性向けエンパワーメント動画メディア『BLAST』を運営する石井リナさんらも登壇。20代、30代のこれからを担う世代が自発的に声を上げる姿に希望や頼もしさを感じた人は多かったようです。しかし上野さんから見れば、現実はそういいことばかりではないといいます。

「SNSやテクノロジーが声を上げるためのツールとして登場したこと、その威力は大きいと思います。ただ現場からは、同時にすさまじい批判やバッシングも受けるという声もよく聞きますね。

私たちの運営している情報サイト『ウィメンズアクションネットワーク』も、もともとは女性の安全な情報発信の場を確保したいとの思いで立ち上げたのですが、大量の誹謗中傷が来たことで、結局コメント欄はあけないという選択をするケースが多くなりました。情報発信のハードルは下がった反面、ネットの世界が女性にとって安全とはいえないということは、皆さんも痛感しているでしょう? 良い面と悪い面、両方あるということですね」


性差別も男女平等も、人は親の背中から学ぶ


セッション参加者には若い男性の姿も目立ち、議論の中では若い世代から「それほど男女格差を感じてこなかった」との声も聞かれました。しかしこうした世代間ギャップは、時代という一律的なものではなく、あくまで「他の人が置かれた環境への想像力が足りないからでは」と上野さん。

「女子校育ちで、社会人になるまで女性差別を経験したことがなかったという女性は多いですから。ただ、彼女たちに『あなたの育った家庭はどうだった?』と聞くと、その子たちの親の世代で夫婦関係が対等だったというカップルはほとんどいません」

つまり家庭内に格差や差別があっても子どもがそれを認識することは難しく、むしろそれが“普通”になってしまうということ。だからこそ、将来の男女平等を実現するにはそれぞれの家庭から変えていくことが大事だといいます。

 

「子は親の関係を見て学ぶんです。だからこそ家庭の中での男性の役割というものを変えていかなければならない。データでもはっきり示されていますが、例えば日本の高校生を、共学男子、共学女子、別学男子、別学女子に分けてそれぞれのジェンダー意識を比較した調査があるのですが、そこでは別学男子、つまり男子校の男子生徒の意識が最も保守的、という結果になっているんですね。そして日本ではこの子たちが、いわゆる“東大男子”と呼ばれるようなエリート層になる。

私は実際にたくさん見てきたからわかるんですが、こういう男性たちはみんな、いずれは自分も家庭を持ちたいし子どもも欲しいと思っていても、自分も子育てしなきゃいけないとはこれっぽっちも考えていないんですね。なぜかと言えば、自分の両親がそうだったから。ずっと男性社会のなかで育ってきて、女といえば専業主婦の母親しか知らないから、家事や育児は女がするものでしょ、となってしまうんです」

 
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