送料無料化をめぐり「楽天市場」が揺れています。公正取引委員会(公取委)が申し立てていた緊急停止命令は取り下げられましたが、公取委による審査は継続中です。ネット通販の利用者としては、この問題についてどう向き合えばよいのでしょうか。

 

楽天はライバルのアマゾンに対抗するため3月18日から送料無料化を実施する方針を示していました。しかし無料化のための原資を出店者が負担するというやり方に一部の出店者が猛反発し、公正取引委員会が調査に乗り出す事態となりました。

公取委は2月10日、独占禁止法における優越的地位の乱用にあたる疑いで、同社に対して立ち入り検査を実施。楽天側は、送料に関する表示を「無料」ではなく「送料込み」に変更するとしましたが、行為そのものに違法性はないとして、無料化を実施する方針は撤回せず、公取委との対立がさらに先鋭化していました。

事態を重く見た公取委は2月28日、独占禁止法違反が疑われる行為を一時的に停止させるため、緊急停止命令を東京地裁に対して申し立てています。緊急停止命令とは、行政処分の前段階の措置であり、事態を放置すると、違法状態からの回復が困難になったり、公正な競争が著しく侵害される場合に発動されます。公取委が緊急停止命令を申し立てるのは実に16年ぶりのことです。

楽天は3月6日になって、全店舗への一律導入を延期すると発表し、これを受けて公取側も停止命令を取り下げたことで、両者の対立は一旦休戦となりました。楽天が一律導入を延期した理由は、新型コロナウイルス対策ですから、公取委の要請を完全に受け入れたわけではありませんが、楽天側が事実上、譲歩したというのが関係者の一致した見方です。

しかしながら、楽天は法的に問題ないとの立場を崩していませんから、公取委も違反行為に関する審査は継続するとしています。つまり現時点では、公取委は楽天の送料無料化について、引き続き違法である可能性が高いとみなしているわけです。


送料無料はすでにアマゾンをはじめさまざまなネット通販が実施しているにもかかわらず、なぜ楽天だけが問題視されているのでしょうか。楽天とアマゾンは利用者から見ると同じネット通販サイトですが、両者のビジネスは大きく異なっています。

 
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