誰もが衰え、日々刻々と老化していく。自明の理にもかかわらず、「老い」が怖いーー。そんな不安を持つ人は少なくないのではないでしょうか。
『「ボケたくない」という病』の著者で、30年以上、認知症の患者さんと向き合ってきた老年精神科医の和田秀樹さんは、「『認知症は神様がくださったプレゼントだ』という人もいますが、確かに、その通りだと思います」といいます。
ではなぜ私たちは、老いが、ボケることがこんなにも怖いのでしょうか……。
和田さんの本から、そのヒントを探ります。

「ボケたら不幸」は思い込み?認知症のプロが語る「正しい老い方」_img0
 

今のところ認知症を完璧に予防する方法はありません。
認知症は「老化」のひとつですから受け入れるしかないのですが、むやみに怖がることはありません。誤解や思いこみを解いて正しい知識を持てば大丈夫です。

 

「ボケたら不幸」は勝手な思いこみに過ぎない!


国立長寿医療研究センターの調査(20代から70代の男女約2000人の調査、2004年)では、「高齢者になるのは不安」と答えた人は8割以上、その不安の内訳は、「病気になること」(72%)、「収入がなくなること」(68%)を抜いて、「寝たきりや認知症になって介護が必要になること」(78%)が1位になっています。
また、「心配な病気」は、「がん」(77%)と「認知症」(70%)が大多数で、約4割の人が「長生きしたくない」とも回答しています。

人間は、本来は長生きをしたいと思うものです。ところが、こうした結果が出ているのは、それだけ認知症などに対する不安が大きいということでしょう。
内閣府が行った「高齢者の日常生活に関する意識調査(60歳以上の男女約4000人の調査、 2014年度)」でも、日常生活でもっとも大きい不安は「健康や病気」(約68%)、「寝たきりで介護が必要になる」(約60%)、「収入が不安」(約34%)、「子や孫の将来」(約21%)という結果が出ており、やはり、「病気」「寝たきり」「介護」といったことが老後の不安の大きなキーワードになっていることがあきらかです。

これらの調査結果からもわかるように、多くの人が認知症や、それに付随するかもしれない寝たきりや介護に対して、大きな不安や恐れを抱いています。老後が不安になったり、認知症を恐れたりする気持ちもわからないではありませんが、みなさんが抱く漠然とした不安や恐怖の裏には、大きな誤解があるように思えて仕方がありません。

大きな誤解。それは、「認知症になったら、ボケたら……その後の人生は絶対に不幸だ」
という思いです。あなたの中にもあるのではないでしょうか。もしそうだとしたら、勝手な思いこみに過ぎないと断言できます。