政府がコロナウイルスの経済対策のひとつとして、国産和牛や魚介類を対象とした商品券配布を検討しましたが、世論の反発の大きさから事実上、断念するという出来事がありました。商品券の配布に代表されるような、特定分野の需要を喚起する方策は、コロナウイルスへの対策としては効果が見込めるのでしょうか。

 

安倍政権は2020年3月27日に2020年度予算が国会で可決・成立したことを受けて、大規模な経済対策の検討を開始しました。本来であれば、もう少し早く着手しておくべきでしたが、国会での予算審議を優先した形です。

少し遅くなったとはいえ、政府の経済対策に対する期待は高く、多くの国民がその内容に注目していましたが、具体的な施策として、和牛の商品券、魚介類の商品券、旅行券といった内容が次々と出てきたことから批判が殺到。結局、経済対策には盛り込まれない公算が高くなりました。

もちろん政府の対策はそれだけではなく、所得が減った世帯を対象に30万円を支給する方針がほぼ固まっています。しかし、この現金給付についても、西村康稔経済再生担当相が「実際の給付は、早くても5月末になる」と述べるなど、現実に発生している問題の深刻さと比較すると、大きなギャップがあるようです。

永田町では昔から、経済対策の一つとして、業界ごとの支援策を実施するというのがお決まりとなっており、あまり報道はされていませんが、今回の商品券と似たような施策を過去に実施したこともあります。

食肉業界や水産業界も今回の感染拡大で大きな被害を受けているのは事実であり、苦しい状況にあるというのはその通りでしょう。しかしながら、今回の感染拡大では、公務員や年金生活者など、税金から確実に支払いが行われる人たちを除けば、ほぼすべての国民が何らかの打撃を受けているはずです。こうした時に、特定の業界の景気をよくするという従来型の施策は、広範囲な理解を得られない可能性が高いでしょう。

さらに言えば、感情的な問題はともかく、純粋な経済対策としてもあまり効果を発揮しない可能性が高いと考えられます。その理由は、需要を拡大させる施策と、感染を防止する施策は相互に効果を打ち消してしまうものだからです。

 
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