「医療者の健康」という視点

 

医療の供給側を増やすためには、医療者が健康に働き続け、さらには専門科の垣根を超えて、感染者の治療にあたることが求められます。

 

医療者の健康は、もちろん医療者自身の体調管理にかかっていることも間違いありませんが、いわゆる「三密」が防ぎにくい医療機関では、院内感染が一度起こるとあっという間に広がりがちです。ひとたび院内感染が起これば、感染した医療者が休みになるだけでなく、その濃厚接触者である同僚も勤務が難しくなるなど、多くのマンパワーがあっという間に失われることになります。

無症状の方からの感染など、防ぎようのないこともありますが、医療者をこのような院内感染から守るためにできることは、「軽い風邪を引いたかな?」と思った時に、気軽に医療機関を受診しないことです。

これまではもしかすると、「ちょっと風邪薬をもらいに行こう」と病院を訪れていた方もいらっしゃったかもしれません。しかし、それが風邪であれ、新型コロナウイルス感染であれ、医療者に感染を広げるリスクがあるのです。あなたにもし持病もなく、軽い症状なのであれば、病院を利用せず自宅で休む、市販薬を使って様子を見る、というご協力をいただくことが大切です。
 

あわてて病院に行かない


このような受診行動の多くには、背景に不安の気持ちがあります。もちろん不安を抱くことは自然なことですが、人の不安を煽るような行動は、回りまわって医療崩壊を引き寄せていることにも自覚的であるべきだと思います。例えばSNSで人の不安を助長ばかりするような、根拠のない内容を拡散する行動もまた、慎むべきだと考えられます。

また、たとえ自分が「新型コロナウイルス感染かもしれない」と思っても、闇雲に病院を受診しないことも大切です。多くの医療機関で、院内感染を広げないよう、受診者の動線を分けるような取り組みをしています。受診が必要と思われた際には、まず電話でご連絡をいただく必要があります。

こういった取り組みにより、院内感染を少しでも防ぐことで、医療の供給を維持することができます。

院外に視点を移せば、働き盛りの医療者には小さなお子さんをお持ちの方も大勢いらっしゃいます。これらの方の中には、普段は託児所や保育所に子供を預けて働かれていた方もいます。そのような家庭では、お子さんを預けられずに働きに出ることが許されなくなった方もいるでしょう。こういった方のお子さんの面倒を見ていただくような対応もまた、供給を維持する助けになると思います。感染リスクが、と考えられるかもしれませんが、その分その方によって助けられる患者さんが数多くいることを忘れてはなりません。

供給の問題は、人に限ったことではありません。医師や看護師が十分にいても、防護具がなくなれば医療者は安全に働けなくなってしまいます。

マスクの買い占めなどが度々報道されていますが、使い捨てマスクを医療機関に届ける、すなわち一般の場では再利用可能な布マスクを使い、使い捨てマスクは医療機関に確保する協力もまた、大きな助けになると思います。
 

「コロナかなと思ったら?」家庭や職場で体調が悪い人が出たら、どうすればいいのか?>>