このドラマの監督を務めたのは、お笑いコンビ・品川庄司の品川ヒロシさん。メニューごとに料理監修の先生を変え、調理シーンのアングルや湯気の映り方、添え物の位置まで、とことんこだわったという料理撮影のおかげで、どの品もおいしそう。深夜に、強力な“飯テロ”ドラマが出現しそうです。
「これまでに品川さんはアクション作品を数多く撮られている方ですが、今回は調理がアクションであり、大切に撮りたいとおっしゃっていました。実際、観ている人は、この居酒屋に行きたくなるんじゃないかな。最初は『料理がおいしそう』というシンプルな反応だと思うんですけど、料理には落ち込んだ人の気持ちを上げる力があって、そのくらい大事なものなんだというところまで伝わるように、品川さんは撮っていました。みなさん、芸人の品川さんに対して持っているイメージってあると思うんです。キレる芸というか(笑)。でも、すごく明るく現場を引っ張ってくれて、イメージとは正反対でした。印象に残っているのが、ちょくちょく笑いの要素を追加されたこと。ポイントポイントで、こんな表情にしたほうがくすりと笑えるんじゃないかという要素を足していくんです。芸人の品川さんならではの演出でした」
現場をなごませたのが、料理本を出すほどの腕前を持つ、品川監督お手製の料理でした。
「リハーサルをしたと思ったらセットの裏に行って、料理をされているんです。どうするのか聞いたら、『お昼ご飯にスープを差し入れようと思って』というんです。実際に、温かいスープを出してくれたり、一人一人のキャストにとても愛情を持って接してくださいました」
韓国では、人びとのエネルギーに圧倒された
大谷さんといえば、以前は韓国を拠点に活躍していたことで知られています。韓国映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞作品賞に輝き、BTSを筆頭に数々のK-POPグループが世界的な活躍を見せるなど、勢いを増す韓国エンタメ業界。その中心にいた大谷さんが、当時感じたこととは。
「現地に住んでみて、芸能界に限らず、一人ひとりがエネルギッシュだと感じましたね。自分が何をしたいのか、しっかり主張する意志の強さであったり、やりたいことに対して努力を惜しまないパワーはすごかったですよ。番組に出演していても、『ここではあまり前に出ないほうがいいかな』と引く人はいませんでした。みなさん、自分が思ったことややりたいことを、ためらわずに表現していた印象があります」
『パラサイト』で家政婦役を演じたイ・ジョンウンさんとは、映画『焼肉ドラゴン』で共演。彼女をはじめ、韓国人キャストたちの凄みを感じたと振り返ります。
「何度もテイクを重ねる現場だったんです。韓国人キャストは、怒りを爆発させるような感情的なシーンを、しかも日本語でやり続けなければならなかったのに、韓国人キャストはみなさん、何度テイクを重ねても、それがたとえ難しい日本語の台詞でも一切NGを出さず、同じテンションでやり遂げたんですよ。韓国人俳優たちの底力を見せつけられました」
『異世界居酒屋~』の撮影では、そんな韓国の現場を思い出したそう。
「僕がいた頃は、スケジュールがタイトでかなりきつかったんです。それでも、頑張れるエネルギー源になっていたのは、演者もスタッフも一緒になって食べる温かい食事でした。今回のドラマの現場でも、冷えたお弁当ではなく、品川さんやスタッフの方々が作ってくれた温かい料理のおかげで、楽しく撮影を乗り切れたんだと思います。改めて、食べるということは、お腹だけでなく、人の心をも満たす大切なことなんだと感じましたね」
まったく韓国語ができない状態で飛び込んだ韓国芸能界。慣習や気質の違いに戸惑い、苦労も絶えなかったはずですが、確かな地位を築き上げました。それまでには、数えきれない苦労があったはず。大谷さんの柔らかな笑顔の中にも芯の強さが感じられるのは、大変なことを自らの力で乗り越え、道を切り拓いてきたからに違いありません。
<作品紹介>
WOWOWオリジナルドラマ『異世界居酒屋「のぶ」』
蝉川夏哉の大人気ライトノベルをドラマ化。京都の裏通りにありながら、なぜか入口が異世界とつながってしまった居酒屋「のぶ」。異世界の個性的な住人たちが、お馴染みのメニューを通じてさまざまな人間ドラマを繰り広げていく。監督・脚本に品川ヒロシ、出演は大谷亮平、武田玲奈/白洲迅、小林豊(BOYS AND MEN)/阿部進之介ほか。5月15日(金)より、WOWOWにて放送スタート。【第一話無料放送】
また5月8日より、第1話まるごと無料配信中(詳細は番組公式サイトにて)
ヘアメイク/MIZUHO(Vitamins)
スタイリング/伊藤省吾 (sitor)
取材・文/小泉咲子
構成/山崎 恵
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