人はいかに感情によって不自由になっているかに気づく『アーモンド』

『アーモンド』
<あらすじ>
扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳の高校生、ユンジェ。母親は、そんな彼に「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記させることで、なんとか"普通の子"に見えるようにと訓練してきたのだが、母は事件によって植物状態に。そんな時、激しい感情を持つゴニという少年と出会い、ユンジェの人生は大きく変わっていく。

バタやん:私、これまだ未読なのですが、あらすじを読む限り、すごくおもしろそう。

渥美:主人公のユンジェくんが「感情がない」というところがポイントで、その分、他の人たちが感情があることによって不自由になっていることが浮き彫りになるっていうね。あの人好きじゃないとか、コレなんか嫌だな〜とか、先入観とか……そういうのがあるから判断が鈍る、行動が起こせないってことがいっぱいあるじゃない。

バタやん:なるほど。今、私、K文学(韓国の小説)にすごくハマっているので、このゴールデンウィークはぜひこれ読んでみます。
 

今年もっとも書評に取りあげられたで賞『掃除婦のための手引き書』

『掃除婦のための手引書 ルシア・ベルリン作品集』
<あらすじ>
毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦の話の表題作「掃除婦のための手引き書」のほか、ルシア・ベルリン没後10年にして初の邦訳作品集。

バタやん:ルシア・ベルリンの『掃除婦のための手引書』は、文芸誌だけじゃなく、ファッション誌からウェブメディアまで、めちゃくちゃいろんなメディアの書評ページに載りまくってましたね。今年一番、書評で取り上げられた翻訳作品なんじゃないでしょうか。

渥美:間違いないね。翻訳に限らず1位かもしれないね。

バタやん:これはね、ミモレでも取材させてもらったんですけど、本読みの人が語りたくなる本なんですよね。岸本佐知子さん訳でしょ。

「岸本佐知子&山崎まどかが『とにかくすごい』と語彙を失うルシア・ベルリンとは何者か」はこちら>>

渥美:うん。「私、好きな作家はルシア・ベルリンかな」とか言いたいもんね。

バタやん:言いたい。表紙のこの写真の人がルシア・ベルリンなんだけど、女優かよ!っていうかっこよさですもんね。
 

 

渥美:文章もガツンとくる。アルコール依存症のシングルマザーの話とかね。

バタやん:だいたいずっとお酒飲んでますよね。え? そこで終わるの?? ってとこで終わっちゃったりするところもかっこいい。
 

壮大な中国SFの世界へどっぷりハマるべし!『三体』

『三体』
<あらすじ>
父親を文化大革命で惨殺された女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)は、謎めいた軍事基地にのスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれない極秘裏のプロジェクトが進行していて……。
本書に始まる“三体”三部作は、現代中国最大のヒット作。アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いている。

渥美:物理学の難問「三体問題」から着想した「三体星人」っていう異星人が出てくるんですね。異星人が三体って漢字の名前なのも面白いし、「三体」っていうオンラインゲームも出てきたりして。

バタやん:うわ〜。すみません。私、今、ぜんぜん話についていけてなかった……。

渥美:ざっくりいうと中国のSFなんだよね。私も中国のSFは読んだことがなかったけど興味深いですね。ロシアのSFで『宇宙飛行士オモン・ラー』という作品があって、これがすごく面白かったの。日本人の私には想像もつかない世界というか。違う国のSFって発想がまた全然違うから、そういう面白さはあるかもしれない。

バタやん:たしかに。SFとかダークファンタジーものって、その国の闇の部分だったり、何が怖いのか、みたいな感覚が浮き彫りになるのかもしれませんね。


――と、ここまででライブ配信は強制終了されてしまったのですが、本屋大賞には、<発掘部門>という部門があり、土屋賢二さんの『無理難題が多すぎる』が受賞。こちらは「週刊文春」の人気コラム連載をまとめたものです。

1時間で14作品を紹介しようというのが無謀であった、という反省もありつつも……。また、話題作品を語り合う、インスタ読書会はぜひ企画したいと思います。きになるものがありましたら、ぜひステイホームのおともに読んでみてください。皆さんからのご感想もお待ちしております!
 

前回記事「『流浪の月』ほか【2020年本屋大賞】受賞作品のあらすじと見どころを解説!」はこちら>>