また、PCR検査の欠点はと言えば、一つは結果が出るまでに時間がかかることです。また、専用の装置を必要とするので、どこでもできるわけではなく、検査機器を持つ大学病院などに限られ、クリニックのような小規模の医療機関で、自前で検査をやることは困難です。加えて、装置を正確に扱うマンパワーを要するという点もあげられます。「検査を増やせ」と言うは易しですが、実際にその装置を正確に扱う人を急増させることは簡単ではないのです。

このため、検査のキャパシティに限界が生じるという点が最大の欠点かもしれません。

 


抗原検査「陰性」。でも、ウイルスがいないとは言えない


一方の抗原検査は、PCR検査とは検出するものが少し異なります。
「抗原」というのは、人の免疫の攻撃を受けるウイルスの構造の一部を指します。その構造に、人の体の中で作られた「抗体」がくっついて、免疫機構に認識され処理されることになります。ウイルスを空港で預ける旅行カバンに例えると、抗原はカバンの持ち手、抗体はカバンの持ち手に取り付けられるタグのようなもので、これが目印になり、処理の対象だと認識されるようになるのです。

この「抗原」と「抗体」は鍵と鍵穴の関係で、1対1でいつもくっつくことができ、後々にも記憶されることが知られています。

このため、一度ウイルスの抗原が人の体で認識されると、「抗体」ができ、それが保存され循環することで、二度目に同じウイルスが襲いかかってきたときには既に準備されていた「抗体」がくっついて、ウイルスをすぐにやっつけることができるようになるのです。

初めての感染のときには、この「抗体」がしっかりできるまでに最低でも1−2週間程度かかることが知られており、だからこそ「抗体」検査は、感染後すぐには使いものにならないのです。一方の「抗原」検査は、ウイルスそのものの特徴的な構造の一部を検出するのですから、今の感染がわかります。

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抗原検査の弱点とは?


しかし、遺伝子を増幅して検出するPCR検査と比べると、抗原検査の場合にはウイルスが少ないと十分検出できない可能性が指摘されています。

これは実際、インフルエンザなど多くのウイルスでも同様に観察されていることであり、新型コロナウイルスでは、同様の理由からPCRと比較して見逃しがさらに多いのではないかと言われています。

一方、他のウイルスと誤解する確率はPCRと同程度に低いのではないかと考えられています。もちろん、その確率はゼロではありませんから、検査を過信してはいけません。

このことをPCRと同様に、診断学の世界で言い換えると、検査陽性となればほぼ間違いなくウイルスが存在すると言って良さそうですが、検査陰性はPCR検査以上に解釈が難しく、陰性であってもウイルスがいないとは言えないことになります。

これは、抗原検査のもつ最大の欠点かもしれません。

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