緊急事態宣言が5月末まで延長されました。家庭、仕事、学校、保育園、外出自粛…、新型コロナウイルスの影響は生活のすべてに渡り、たいへんな日々を過ごしている方々が多いと思います。
この状況は、いつまで続くのでしょうか。再び、人が集まったり、旅行したりできる日は、いつ来るのでしょうか。
多くのことが不安定な今、どのような心構えで過ごしたらよいのでしょうか。

米国でも内科医としての勤務経験を持ち、現在は都内の病院に勤務し、新型コロナウイルス感染症患者と向き合っている医師の山田悠史さんに、この状況がいつまで続くのかについて、寄稿いただきました。

 

新型コロナウイルス感染症について、多くのことがわかってきたとはいえ、未来のことまで正確に予測できているわけではありません。

このため、「新型コロナウイルスとの戦いがいつまで続くのか?」という問いに対する答えは、「分からない」が正解かもしれません。

しかし、それではただの役立たずになってしまいますので、皆さんの気になる「今と同じような状況はいつまで続くのか」について、現実的な答えをここでは準備したいと思います。

 


「基本再生産数」と「集団免疫」


その理解のためにはまず、この感染流行が収束する鍵となる「基本再生産数」と「集団免疫」について知っておく必要があります。

まず「基本再生産数」というのは、1人の感染者から平均何人の免疫のない人にウイルス感染が広がるかを示す指標です。これまで感染が確認された人のデータをもとに、この数値が推定できるのです。抗体検査の広がりとともに、知られているよりも遥かに多くの方に感染が広がっている可能性も浮上しています。この数値は今後変わりうるかもしれませんが、今のところ、2から3程度ではないかと推計されています。すなわち、1人の感染者から平均2人や3人に感染が広がる、ということです。

基本再生産数「3」の感染イメージ
1人の感染者から平均3人に感染する。


2009年から2010年の「新型」インフルエンザが1.46、毎年来る季節性インフルエンザが1.27程度と言われていますから、新型コロナウイルスの感染がいかに広がりやすいかが分かります。

仮に、ここでは多い方で見積もって、この新型コロナウイルスの基本再生産数が3だったとします。すなわち、1人の感染者から平均3人に感染伝播が広がるという仮定です。

この仮定の場合、感染が広がる相手の3人のうち、2人にウイルスに対する免疫があり、感染を防ぐことができれば、1人の感染者から生じる感染者は1人になります。この数字を「実効再生産数」と呼び、それが1になったと表現します。

集団免疫による実効再生産数「1」の感染イメージ
1人の感染者から平均1人に感染する。
2人は免疫保有により感染しない。


これを社会に落とし込めば、ある都市で感染が広がった場合、その都市の住民の中で、3人のうち2人、66%の方に免疫が生じていれば、理論上、感染者は1人から1人へと、増えずに安定することになります。それ以上、例えば70%程度の方に免疫があれば、この数字は1未満となり、何の対策が取られなくとも感染者数は時間とともに減っていくことがお分かりいただけると思います。これが「集団免疫」の考え方です。

ただし、この数値は、あくまで先の数字が3の時です。これがさらに高くなれば、その分免疫が必要な方の数も増えます。例えば、極端な例として、基本再生産数を10にして再度シミュレーションしてみましょう。

1人から10人に広がってしまうと仮定すれば、免疫は何人に必要でしょうか。10−1=9人以上となりますね。10人中9人以上に免疫が必要ということになり、9割以上の方に感染が広がらないと、感染症は最終的な収束は見込めないということになります。

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