第三者に相談を。「夫婦だけで解決」は絶対にダメ!

ではもしも家族に暴力を振るわれた時、それ以上エスカレートさせないためにはどのような行動を取るとよいのでしょうか。

「夫が一度でもあなたや子供に手を上げたら、できるだけすぐに周囲に話すことです。家族や友達に相談するのはもちろん、その暴力によってケガをしたなら必ず警察を呼んでください。夫の名誉や世間体を気にして飲み込む人が多いのですが、これは絶対に勧めません。DVにおいてもっともやってはいけないのが、夫婦二人だけで解決しようとすることなんです」

 

というのもDVが起きた現場では、本人の記憶が曖昧なことが多いのだといいます。

「暴力をふるわれた奥さんからよく聞くのが、『そのときの夫は目がイッていた。何かに乗っ取られているようだった』というセリフです。小説『ジキルとハイド』ではないですが、その瞬間は人格が変わってしまっていることが多いのですね。なので私は被害者の方には『もしまたDVが起きた時は、相手の声を録音しておいてください』と言っているのですが、後に公的な話し合いになったとき、この録音を当人に聞かせると『本当に俺の声か?』『俺じゃない』などと言うんですよ。

暴力をふるっている瞬間は軽く酩酊しているような状態になっていて、後になると記憶が残っていなかったり、『軽く押しただけ』ぐらいに記憶がすり替わっていたりするのです。だから家庭内だけで話し合っても、決して解決しない。できるだけオープンにすることで、本人に事の重大性を認識させる必要があるのです」

 


少しでも兆候が見えたら、まず逃げ場の確保を

また万が一家族から暴力を振るわれた場合は、仮に夜中の出来事だったとしても「朝になったら」などと時間をおかず、すぐに警察などに連絡することが大切なのだそうです。子供への暴力については各自治体に必ず『虐待・DVに関する相談窓口』があるので、そちらにも連絡してほしい、と根本さん。

「理想をいえば、警察に連絡した後すぐ家を出てほしい。通報すれば警察はすぐ来てはくれますが、余程のケースでない限り逮捕はしてくれません。報復など二次災害を防ぐため、そしてこれ以上罪を重ねさせないためにも、通報の後は家を出たほうがいいです。それによって本人は、事の重大さをより認識することができますから」

ただ、いざ暴力をふるわれると、そのような冷静な思考はなかなかできないもの。それだけに、DVの予兆を敏感に嗅ぎ取って準備をしておくことが重要になってきます。

「それまで何の兆候もなかったのに、ある日急に手が出るということはありません。大抵は、口ゲンカが激しくなってきた、怒鳴るようになってきた、普段聞かない暴言を吐くようになってきたなど、予兆があるものです。相手の様子がいつもと違ってきたなと感じたら、録音や、逃げ場所の確保といった準備をしておいてください。実家とか、ホテルとか……、今はコロナ禍で誰かの家に行くのは難しいですから、とりあえず車でどこかへ出てしまうのもいいでしょう。とにかく、手をあげられたらその瞬間にアウト。DVにはそれぐらいの覚悟を持っておくことが必要です」

・DV相談ナビ  tel. 0570-0-55210
どこに相談すればよいかわからない時は「DV相談ナビ」へ。最寄りの配偶者暴力支援センターなどの相談窓口を案内してもらえます。

・警察相談専用電話 #9110
事件や犯罪にはまだ至っていない、DVやストーカー被害を警察に相談したい場合はこちらに。電話をかけた地域を管轄する警察の相談窓口につながります。

・女性の人権ホットライン tel. 0570-070-810(全国共通)

配偶者暴力相談支援センター一覧(政府広報)

取材・文/山本奈緒子
構成/山崎 恵
 
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