外出自粛要請が段階的に解除され、少しずつ新しい日常が始まろうとしています。とはいえ、以前のように自由に行きたい場所に行けるようになるのはもう少し先の話で、まだまだ家で過ごす時間が多い日々が続きそうです。

今回の自粛生活で、まわりの人への「おかげさま」を強く実感したというタレントのアン ミカさん。テレビ収録もすべてリモートに切り替わり、仕事には大きな影響が出ていますが、「自分が家にいること」を前向きに捉えていたそうです。

いつもポジティブなアン ミカさんは今の生活をどのように考え、前向きに昇華させていたのでしょうか。

「おかげさま」に気づき、人とのつながりを見直した

 

「昨年、ラグビーW杯で『one for all, all for one』の団結力に勇気をいただいたあとに今回のコロナショック。一人一人が感染しないように気をつけることがみんなのためになるという相互作用が見える時代になりましたよね。自分が家にいることが人のためになる、と実感できたのは励みになりました。

また、これまで当たり前だと思っていた生活がたくさんの人のおかげで成り立っていたことに改めて気づきました。これまで体調が悪くなったら病院に行けるのが当たり前だと思っていたけれど、受け入れてくださる医療従事者の方にも家族がいること。こんな状況でもインフラを止めないように動いてくださる方がいること。当たり前を支えてくださっていた方々への『おかげさま』に気づいたときに、本当に強く『ありがたい!』という気持ちが沸き起こってきて。

『おかげさま』を実感したことで、私自身も人とのつながりを見直す機会になっています。たとえば、これまでは誰かと一緒にいてもスマホを見ていて意識は画面の中にある、なんてことがありましたが今は隣にいる人や遠くにいる親戚にも思いやりを持って過ごしています。私は5人兄弟で、みんなが揃って会えることってなかなかないんですけど、この状況だからリモートで会おう!ができる。新しい出会い方や時間のシェアの仕方が広まったのも、ありがたいことです」

 

本や映画から今の時代を考えるヒントをもらう


家にいる時間が増えたことで、これまで忙しくて手をつけられなかった本や映画に触れる機会が増えたというアン ミカさん。自粛中に読み返した本や観た映画からも今の時代を改めて見つめ直すヒントをもらったそうです。

「私は空間づくりに興味があって、谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』が一番好きな本なのですが、まずこれを読み返しました。まだ電灯もない時代の日本の生活の中にある美の感覚について論じたもので、土壁や低い天井、お茶碗ひとつとっても、その光の当たり方にこそ日本の美がある。それこそ『おかげさま』で陰があるから光があるんです。暗さを嘆くのではなく、今あるものに感性をはたらかせることで満足に思う芸術性を養ってくれる本なので、今この状況で読んでみると、また新しい気づきをもらえます」

「映画でいうと、普段はハリウッドの勧善懲悪なエンタメ作品が好きなのですが、ちょっと趣向を変えて『2人のローマ教皇』を観ました。あらすじは控えますが、この映画は『赦し』について描かれているんですね。どれだけ崇高な聖職者にも苦悩があったり、赦しが必要だったりする。特に今の時代、SNSを通じて「あの人自粛してない!許せない!」だったりとか、無意識に人を裁く心グセがついてしまっていると感じています。やたら人を断罪してしまう時代に、どうやって許していくかというのは、これからの私たちの大きなテーマかなと思います。

この映画では、お互いの許しが理解となり、愛となり、救いとなり今につながっているのが描かれているとてもいい映画でした。今の時代だからこそ、ぜひ観ていただきたいです」

まわりの環境への「おかげさま」に気づいたからこそ、自分が家にいる意味を前向きに捉えることができ、人に対しての思いやりも生まれてきたというアン ミカさんのお話。確かに暗いニュースが多いなかで、SNS上では医療従事者や流通などインフラを支えてくれている方への感謝の声が多く上がっていました。

これまでと違う日常だからこそ、当たり前だったものも新たな一面があることに気づける。今の状況を前向きに捉えるヒントはその発想の転換にありそうです。

取材・文/宮島麻衣

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