東京高検の黒川弘務検事長が、産経新聞記者や朝日新聞社員と賭け麻雀をしていたという報道を受けて辞任しました。安倍政権は今年1月、安倍氏に近いとされる黒川検事長の定年を半年延長するという前代未聞の閣議決定を行いましたが、この閣議決定については違法ではないかとの指摘が相次ぎました。
このため安倍政権は3月に入って、検察官の定年引き上げや、内閣や法相が必要と認めた検察幹部については任期を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法の改正案を国会に提出し、事後的に黒川氏の定年延長にお墨付きを与える算段でした。ところがネットを中心に反対意見が続出したことから、結局は今国会での成立を断念しています。
安倍政権は次の国会での成立を望んでいましたが、ここで飛び出してきたのが、渦中の人物である黒川氏の賭け麻雀スキャンダルです。結局、黒川氏は検事長を辞任しましたから、安倍政権にとっては、目論見のすべてが瓦解してしまった格好です。
黒川氏は犯罪行為を行っていながら、辞任だけで済み、刑事処罰の対象にならないことについては多くの国民が憤慨していると思いますが、今回のコラムで取り上げるのはこの話題ではありません。検察の幹部がなぜ、新聞記者と懇意にして、賭け麻雀に興じていたのかという話です。
当然ですが、取材される側とする側である検察幹部と新聞記者がズブズブの関係になることは、原則としてあってはなりません。しかしながら、今回の件に限らず、検察幹部と新聞記者はかなり親密な関係を構築しているというのが現実です。今回は黒川氏が麻雀好きだったということで賭け麻雀でしたが、様々な形で、検察幹部と新聞記者は常に個人的に情報交換をしていると思ってよいでしょう。
ではなぜ検察幹部と新聞記者と親しい関係を構築するのでしょうか。
ネットなどでは、情報が欲しい新聞記者が検察幹部を接待し、黒川氏は接待攻勢に負けたなどと言われていますが、それはあまりにもナイーブな見方であり、現実はまったく異なります。新聞記者は情報を取ってくるのが仕事ですから、検察幹部と関係を作ろうとするのはその通りですが、検察幹部にとって、単に「接待されたので付いていきました」ということではリスクしかなく、メリットがまったくありません。関係がバレれば大騒ぎになるわけですから、普通はそうした関係を回避するものです。
実は、検察幹部の方も新聞記者との関係を強く望んでいるのです。その理由は、親しい新聞記者に独占的に情報を流すことで、世論をコントロールできるからです。
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