家庭とバランスをとりながら好きなことを仕事にする


それなりに順調にきているように思える大河内さんの新しい人生。ただフラワースタイリストとして勉強、修行に打ち込んでいる間、女優業はどうしていたのでしょう?伺っていると、片手間におこなえる仕事ではなさそうですが……。

 

「やはり女優業は、お休み状態でした。その頃には所属していた事務所も離れて、フラワースタイリストとしての活動だけに専念していたんです。もちろん迷いました。15歳からずっと芸能界で生きてきたので、離れることは怖かったですけど、『今は花に集中したい』と思って。何より子供も女優も花も、となったら全てがおろそかになってしまうだろうと思ったんですよね」

大河内さんは人生を方向転換するにあたって、女優時代と同じように再びバリバリやろう、と考えていたわけではありません。それよりも重視したのは、「家庭とバランスをとりながら好きなことを仕事にする」ということ。同じあり方を目指す人は少なくないと思いますが、そのバランスを実現するコツは何か教えてもらいました。

「私は最初からお花を仕事にすることを目指していたわけではなくて、もう1つの自分の軸を持ちたい、という思いが強かったんです。だけど今、こうしてフラワースタイリストとして活動できるようになって思うのは、好きなことに一生懸命取り組んでいると、それが少しずつ自分の実になって、広がって、次につながっていくんだな、ということ。
最初からビジネスとして取り組むのは、他に守りたいものがある人間にとってはあまりにも大きな賭けですし、家族の負担も大きくなると思うんです。だからもし私のように家庭とのバランスを取りながら働きたいと思われているなら、まずは今できることを頑張って、小さな実績を積み重ねていくことがコツかなと思います」

しかし家庭優先での活動となると、収入面は減ってしまうのではないでしょうか?その点はどう対応されていたのでしょう?

「私の場合、女優時代の蓄えがあったのと、再婚して夫の支えもあったので、それで勉強に集中することができました。卒業してからは、一応花屋での収入も得られていましたし。
もちろん女優のお仕事とは単価が全然違いますが、大事なのは今の生活の中で自分は何を得たいのか、ということだと思うんですよ。たしかに若い頃は高価な洋服やブランドのバッグが欲しいと思っていた時期もありましたが、今は洋服を見ても『お花の仕事をするのに動きやすいか』と花優先で考えてしまうし、湘南に住んでいるので靴もビーチサンダルしか履いていない。
本当はもう自分が欲してないのに、そこに気付かずライフスタイルを転換できないのはすごくもったいないと思うんですよね」


自分のことだけ考えて生きるのは難しくなるから……


今の仕事では、自分で自分の時間をコントロールできるため、それがものすごく心の安定にもつながっているという大河内さん。ということは、女優への復帰はもう考えられてはいないのでしょうか?

「実は昨年、新しい事務所に所属したんです。そこからバラエティ番組とか少しずつ呼んでいただけるようになって、『芸能活動はもうやらない』というつもりは全くないんです。
むしろお花の仕事をサポートしてくれる方も増えたので、徐々に再開したいなと思っています。
今は花という軸を持っている自信があるので、逆に女優だけでなくいろんなことを、例えばモデルや以前はあまりやったことがなかったバラエティ番組にも積極的に出てみたいですね」

今月6月5日で、43歳になった大河内さん。今後は花の仕事においても、もっと活動の幅を広げていきたいと考えているそう。

 

「フラワーアレンジだけじゃなくて、花作り教室のWEB配信も積極的に行っていきたいし、花の生産者の支援もしていきたいと考えていて。花作りって本当に大変な仕事なので、売り上げの一部を生産者の方に還元できるビジネス展開もしていけたらなと夢はふくらむばかりなんです。
でもやはり、私にとって一番大切なのは家庭とのバランス。年齢を重ねると、自分のことだけ考えて生きていくのは難しくて、“自分と何か”という人生になってくる人が多いと思うんです。“自分と子供”とか、“自分と介護”とか。そこを無理にどちらかに比重を置こうとすると、ストレスになってしまう。
だから大好きな花のことも、今までどおり、今の生活の中でできることを丁寧に、一生懸命やっていきたいと思っています」


取材・文/山本奈緒子
構成/片岡千晶(編集部)
 
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