犬、猫、虎、ライオン、フェレットまで新型コロナに
ペット以外の他の動物にも目を向けてみましょう。なんとニューヨークの動物園からは、虎とライオンの感染も報告されています。ニューヨークにあるブロンクス動物園では、まず初めに無症状の飼育員から虎への感染が疑われました。この動物園には、合計5匹の虎と3匹のライオンがいたようですが、1匹目の虎に咳などの症状が出て、検査を行ったところ、新型コロナウイルスが陽性となっています。その後、ライオンからもウイルスが検出され、4匹の虎と全てのライオンに咳などの症状が出ました。
これらの動物でもPCR検査でウイルスの存在が確認されましたが、その後の回復が確認されています。また、動物園にいる他の種の動物も健康観察となっていましたが、その他の動物には症状が出ず、事なきを得ています。しかしこの報告から、広く様々な動物に感染が広がる可能性が示唆されました。
ここまでは自然界での報告になりますが、実験室で動物に、ウイルスを目や鼻から投与して感染が起こるかどうかの研究も行われています。サイエンス誌に報告された研究によれば、フェレットや猫ではウイルスの感染や増幅が起こりやすく、犬でも起こるものの猫ほどではなかったことを報告しています。また、豚や鳥ではウイルスの感染が起こりにくいことも併せて報告しています。
動物の種によって感染のしやすさに違いが生じる理由は必ずしも明らかではありませんが、一つの仮説として、ウイルスの受け皿の違いではないかと言われています。ウイルスが感染するには、ウイルスと細胞がくっつくための受け皿が必要となります。この受け皿はすでに特定されており、ACE2と呼ばれる場所とくっついて感染が成立することがわかっています。人間ではこのACE2が鼻や喉、肺の細胞に見られていて、肺を中心とした呼吸器に感染を起こすのですが、このACE2が比較的多く存在する動物では感染が起こりやすく、比較的少ない動物では感染が起こりにくいとする仮説が知られています。
こういった知見は今後ますます明らかとなってくるでしょう。
猫界でもパンデミックが起きているのか
ここまで見てきたように、人から動物への感染は一定の確率で起こりうるようです。すなわち、あなたが猫や犬を飼っていて、感染してしまったら、ペットにもウイルスを感染させる可能性があるということです。
それでは、あなたの猫から別の猫へは感染が広がるでしょうか。これが生じるとなると、理論上、猫界でもパンデミックが起こりうるということになります。
これについては、猫の実験がすでに行われています。この研究では、まず3匹の猫にウイルスの投与を行い、感染を確認しています。その後、それぞれの猫と1匹ずつ別の感染のない猫を同居させて、感染した猫から同居の猫に感染が伝播するかを観察しています。
すると、3組のいずれもで、3-5日目に感染伝播が確認されました。3/3、100%です。ただし、3組6匹の猫でいずれも症状は見られず、5日程度のウイルス排出期間を経て、ウイルスの消失が確認されています。全員の猫が無事で何よりです。
これらの知見から、猫同士が群がり、濃厚接触があれば無症状の「ネコ―ネコ感染」が生じることが確認されました。
ここまでの知見から、人から猫へ、そして猫から猫へという感染は確認されたことになります。
インフルエンザでは「ネコ―ヒト感染」がある
しかし、猫から人へという感染経路はまだ今のところ確認されていません。今のところ主要な感染経路ではないと言われていますが、こればかりは「まだ分からないこと」と言うのがフェアなのかもしれません。
なぜなら、別のウイルスではありますが、少なくともインフルエンザウイルスでは「ネコ―ヒト感染」が確認されているからです。とても非現実的な感染経路というわけではなさそうです。
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