経済だけでなく仕事や人とのコミュニケーションなど、パンデミックによってありとあらゆるものが一変しました。コロナ以前の世界には戻れないと多くの人が感じている中で、ではどのような状態をもって収束といえるのか、ということも気になります。日々注意しながら過ごすためにも、私たちはどの地点をゴールと考えればいいのでしょうか。

営業を再開した都内の商業施設。人との間隔を確保するための誘導が各所に設置されているほか、入店を制限する店舗も。 写真:AP/アフロ

 

ワクチンの完成がパンデミック収束へのカギに


これは「収束」とはどういった状態なのか、という定義によりますね。
感染の拡大がある程度コントロールされつつ、注意しながら経済活動が行われる状態は完全収束とはいえないように思います。

 

収束が、新型コロナウイルス感染症が流行する前と同じような、完全になにも心配のない世界に戻ることであれば、これはかなり時間がかかる可能性があります。現状、新型コロナウイルスが自然に消えてなくなるということは考えがたいほど、流行は世界中に拡がっています。よって、これが抑えられるとすれば、効果の高いワクチンが開発されて多くの人が接種した場合ということになると思われます(自然感染による集団免疫の獲得は、先に述べましたように現実的ではないでしょう)。

ハーバード大学の研究者たちが発表した論文では、ワクチンができない場合、感染を警戒しながら生活する状態が2022年ぐらいまでは続くのではないかと予測しています。私も、そういった可能性は高いと思っています。
完全な封じ込めに近い状態を達成した国もいくつかありますが、そういう国も油断はできません。国際的な人の交流がある以上、いつまた感染者が流入して流行が始まるかはわからないからです。そういう意味では、パンデミックにおいては世界的な広い視野で、抑制がどの程度なされているかをしっかりと見ていかなければなりません。よって、新規感染者ゼロを達成することは国ごとでは大きな意味はあるものの、それをもって危険性がなくなったということはできません。

そういったことから、結局はワクチンができて十分量接種が完了することをもって収束になるというシナリオが考えやすいかと思います。そうしますと問題は、ワクチンがいつごろできるのであろうか、ということになりますね。
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のワクチンは今までにない猛烈なスピードで開発が進んでいます。特に新しいテクノロジーを用いたワクチンにも注目が集まっているほか、大量の資金投下もなされており、有望なものは多く出てくるでしょう。ですが十分に注意しなくてはならないのは、安全性と有効性です。

ワクチンは薬の一つですので副反応がでることもあります。まして新しいテクノロジーを用いたものであれば未知の副反応も起こりえます。安全性を慎重に評価し、有効性もしっかりと確認する、時間をかけるべき段階でしっかりかけるということが重要でしょう。

総合的に考えて、1年以内にワクチンができる可能性はほぼないと思っています。早くても来年ということにはなるでしょう。そしてワクチン完成後も、生産量がよほど多くない限りはその分配などにどうしても制限ができてしまうと考えられます。

ワクチンができるのにもそれなりに時間がかかりますから、それまでは「基本的な」予防以外には各自ができることは特にないともいえます。基本的な予防法を実施しつつ、慎重な生活をして実質的に感染拡大を制御するという、そういう形での抑え込みが当分の間は続くことになり、本当の意味での「収束」はワクチン待ちになるのではないか、と現時点では考えています。