緊急事態宣言が解除され、休業要請もほぼ緩和。県をまたぐ移動も公に認められる状況になりました。ですが、新型コロナウイルスはまだ終息していません。では、新型コロナウイルス感染者の治療にあたっていた医師はこの状況をどのように考えているのでしょうか。新型コロナの対応法などについて数々の人気記事を執筆されている山田悠史先生に伺いました。

【コロナと国内旅行】6月19日からついに県をまたぐ移動がOKに!国の真意とは? #コロナとどう暮らす>>

 


新型コロナウイルスの治療にあたっている山田悠史医師に旅好き編集者がオンラインインタビュー「国内旅行はいつからしてもいいのか?」

 

山田悠史/やまだ ゆうじ
米国内科専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国各地の病院の総合診療科で勤務。2015年からは米国ニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院の内科で勤務し、米国内科専門医を取得。国内では全国の総合内科医の教育団体JHospitalist Network世話人やニュースメディアNewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)等として、国外ではカンボジアでAPSARA総合診療医学会の常務理事として活動を行なっている。

新型コロナウイルスの最前線で感染者の治療をされており、新型コロナウイルスに関する記事も多数執筆されている山田先生に、オンラインで国内旅行についてインタビューをさせていただきました。


コロナ後の海外旅行や出張で気をつけること #コロナとどう暮らす【山田悠史医師】>>


自家用車で移動し、人混みを避け、ソーシャルディスタンスを保ち、誰にも会わなかったら、コロナ感染のリスクはほぼない!

写真は2019年に沖縄旅行をした時のもの。

高橋:国は県をまたぐ移動はしてもいいと言っていますが、山田先生は今国内旅行をするリスクについてはどのようにお考えですか?

山田先生:旅行でコロナにかかる可能性は、その旅行中に“感染者と濃厚接触する確率がどのくらいあるか”に尽きます。ですので、たとえば感染者が全然いない地域に、公共の交通機関を使わずに自家用車で移動し、誰にも合わないで別荘に宿泊して帰ってくるだけなら、新型コロナウイルスに感染する確率はほぼゼロに近いと言ってもいいと思います。

高橋:えっ、そうなんですね?! だったら、おこもりするようなひとり旅なら、感染リスクが低いんですね。


濃厚接触とは、2メートル以内の距離で15分以上同じ空間にいること


山田先生:一方で、公共の交通機関を使うとか、旅館やホテルに泊まるなど、人に出会う機会が増えれば増えるほど、少しずつ感染リスクは上乗せして高まってしまうんです。
濃厚接触とは定義上は15分以上を指します。そして、ソーシャルディスタンスの2mの距離を取っていない状態。ですから、感染者がいるかもしれない場所に行くとしても、濃厚接触を避け、確実にソーシャルディスタンスが取られるようにすれば、感染のリスクは減ります。

高橋:そうすると、国内旅行で感染する可能性があると考えられるシーンは、たとえば「人がたくさん集まるところに行く」「旅館の宴会場などでみんなで食事をする」「みんなで温泉に入る」ことですかね。

山田先生:日本政府が名付けた“3密”というのは言い得て妙だと思うのですが、「飛沫にもっとも暴露しやすい状況」に行くことがいちばんのリスクになりますし、その逆は感染リスクが低くなります。


温泉で感染する可能性は?密室ではない露天風呂なら感染しにくい?


山田先生:温泉に関しては、海外の温浴施設(サウナ)でのクラスターを報告している文献もあります。たまたま温泉で居合わせた人の中に感染者がいれば、密になってしまいますし、温泉で2mのソーシャルディスタンスをとって入浴するというのもなかなか難しいので、感染リスクはありますよね。ただ、一般的には温泉のような高温多湿の場所は、通常よりエアロゾル(空気中に漂う微細な粒子)や飛沫が飛びにくいので、たとえば蜜を避けるには2mの距離を取らなければいけないところ、温泉だったらそれが1mだったり、30cmだったりしても大丈夫かもしれない。環境としては感染のリスクが下がると言えます。

高橋:温泉なら、密閉空間ではない露天風呂の方が感染のリスクは下がると思っていんですか?

山田先生:換気が高い分、ウイルスが大気で薄まりやすいというのはありますよね。ただ、露天風呂でも咳をしている人がいて、その咳を目の前で浴びてしまえば感染リスクはあります。

高橋:露天だから大丈夫というわけではないんですね。屋内のお風呂で離れたところに感染者がいる場合と、換気のいい屋外の露天風呂ですぐ隣に感染者がいる場合は、後者の方が感染のリスクが高い、ということですよね?

山田先生:そうですね。露天ですぐ隣に座っている方がウイルスをもらってくる可能性が高いです。

高橋:無症状の人もいますし、だれが感染しているかはわからないから、密閉された空間ではないから大丈夫、ということではなく、やはり人との接触を減らすことが大事なんですね。

山田先生:そうなんです。ウイルス感染のリスクは、環境だけが決めるって訳でもないんです。


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