日本では緊急事態宣言が解除され、県をまたぐ移動をしてもいいと国が認めています。お盆は実家帰省を考えている方もいらっしゃると思います。ですが、同時に高齢者のいる実家へ帰省しても、新型コロナウイルスに感染させてしまう不安があるのも事実。国内で新型コロナウイルスの治療にあたってきた専門医師にどのように対応するのがよいのか、お伺いしました。

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高齢者のいる実家に帰省してもいい?新型コロナウイルスの治療にあたる医師に質問!

 

山田悠史/やまだ ゆうじ
米国内科専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国各地の病院の総合診療科で勤務。2015年からは米国ニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院の内科で勤務し、米国内科専門医を取得。国内では全国の総合内科医の教育団体JHospitalist Network世話人やニュースメディアNewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)等として、国外ではカンボジアでAPSARA総合診療医学会の常務理事として活動を行なっている。

最前線で新型コロナウイルス感染者の治療をされており、新型コロナウイルスに関する記事も多数執筆されている山田悠史先生に、実家帰省の是非についてオンラインでインタビューをさせていただきました。


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もし帰省先の家族に持病があるなら、帰省はまだ控えておくのが正解

 

高橋:緊急事態宣言が解除され、6月19日に県外への移動も公に認められたことから、だんだんと街に人が増えているように思います。実際に私の周りでも、お盆は実家に帰ろうかなという声も聞かれます。新型コロナウイルス感染者の治療をされてきた山田先生は、帰省をしてもよいと思われますか?

山田先生:私が治療にあたっていた病院は一時、新型コロナウイルス患者専門の病院として稼働していたのですが、今では新型コロナウイルスの患者さんがゼロになったんです。実際に日本での患者さんが減っていると肌でも感じています。

高橋:ゼロになったのはすごいですね!

山田先生:ですが、国が公に移動を認めているとしても、もし帰省先に持病のある高齢者や基礎疾患を持っている人がいる場合は、帰省はまだやめておく必要があると思います。実際に心臓の病気、糖尿病、喘息や肺気腫といった慢性的な肺の病気などをお持ちの方は、持病がない方と比べて致死率が高いということもわかっています。また子供や若い人よりも高齢者の方が重症化する確率や致死率は高くなります。新型コロナウイルスからいちばん守らなければいけない存在なんです。

高橋:自分はまだ若くて元気だから無症状なだけで実は…ということもありますもんね。私の親は高血圧の薬を飲んでいるから、今はまだオンライン帰省にしておこうかな。

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一人暮らしでだれとも会わず2週間自宅謹慎した後なら、実家帰省で高齢者に感染させるリスクは少ない


山田先生:やはり、自分個人だけの感染リスクを考えるのではなく、他者へのリスクにも配慮する必要があります。ですので、もし自分がコロナ感染者と接した可能性が少しでもあるのであれば、持病のある高齢者や基礎疾患をもっている人がいる実家への帰省は危険です。絶対にやめるべきだと思います。

高橋:大切な家族は守りたいです。

山田先生:ただ、こういった例が現実的かはわかりませんが、たとえば「一人で自宅謹慎を2週間していた、一歩も外に出ておらず、誰とも会っていない。そして症状も出ていない」。こういう人に新型コロナウイルスがある可能性ってゼロなんですね。その状況で、だれにも会わずに自家用車で帰省した場合、新型コロナウイルスを実家に持ち込んでしまう可能性もほぼゼロ。

高橋:なるほど〜!ひとり暮らしで、仕事が完全リモートワークになっていて、宅配便も“置き配”にして、食事もデリバリーにしてこちらも“置き配”にしてもらったら、意外とできそうな気もします。私自身家族はいますが、自粛中は、結構これに近い生活をしていました。

山田先生:このような状況の人に「実家に帰省してもいいですか?」と言われたら、その答えは「感染している可能性は限りなくゼロなので、他者に感染させるリスクはほぼなく、帰省してもOK」ということになります。

高橋:ちなみに、もし“置き配”にせず、直接対面してしまったという場合は、2週間の自宅謹慎をゼロからやり直しになりますか?

山田先生:一般的に感染につながる濃厚接触というのは15分以上のことを指します。目の前で「ゴボゴボ」と大きな咳でもされない限り、数秒の接触ではウイルスを浴びることは多くないですから、感染のリスクにはならないと思います。ましてや、今はドライバーの方もマスクやフェイスシールドを身につける取り組みもされているので、感染のリスクはさらに低いでしょう。

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もし親が危篤なら、実家に帰省してもいいの?


山田先生:今このタイミングで実家帰省をしてもいいかはシチュエーション次第だと思います。たとえば「もう死にそうな親に会いに行きたい」という状況だったら、コロナが…感染症が…と言っている場合ではない。親に会いに行くメリットの方が優先されますよね。
このように、自分が実家に帰省してもいいかを考えるには、会う目的の大きさによりますし、先ほどお話ししたような感染リスクの有無によって考えるのがよいと思います。

高橋:ちなみに山田先生はご実家に帰られていらっしゃいますか?

山田先生:父が心臓にリスクがあるので、もうしばらく帰れていないんです。
ただ、今日本では感染者数はかなり少なくなりましたよね。東京で検出される感染者数って、日にもよりますが、十数人。多くても30人や50人。東京都の1日の感染者数を仮に30人とすると、東京の人口約1000万人分の30人。小数点にすると感染率は0.000003%。もし気になる症状がまったくなければ、自分が感染しているかもしれない可能性はさらに低くなりますよね。だから、自分自身が0.00000…%というのをどのくらい重んじるかもひとつの判断基準になると思います。
少なくとも確実に言えることは、少しでも何か気になる症状があったり、不特定多数の人との接触があったりすれば、今は帰省をやめておいた方がいいということです。


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撮影・構成・文/高橋香奈子

 

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