ドナルド・トランプ米大統領が、未承認の薬を「予防薬」として使用しているという報道がありました。
未承認の薬に期待はできるのか。そもそも、新型コロナウイルス感染症を予防する薬はあるのか。また、開発が進んでいるというワクチンの状況はどうか。
医療の現場で、新型コロナウイルス感染症患者と向き合い、医療従事者向けの情報発信も多い、医師の山田悠史さんに解説していただきました。
これまでの記事と合わせて、参考にしてください。
抗原検査キットが承認。PCR検査、抗体検査との違いとは?>>
コロナ流行はいつ終わる?前線の医師が語る「収束までの3つのシナリオ」>>
トランプ大統領の「予防薬」は効くのか?
まず、感染症の「予防」は、大きく2つの方法に分けられます。
一つ目は、病原体に暴露した(接触した、さらされた)と分かっている方を対象に予防する方法です。
感染症はあくまで病原体に暴露しなければ起こらないので、病原体に暴露したと分かっている方を対象に絞ります。
例えば、インフルエンザでは、感染者と濃厚接触した方に対してタミフルを投与することで、発症が予防できるという有効性が示されていて、実際にインフルエンザ接触者に対して状況を限定して行われています。
もう一つは、病原体に暴露する前から発症を予防する方法です。ここには、症状をきたす「感染症」のみならず、病原体が体に入り込む「感染」自体を予防する方法も含まれます。
例えば、種々のワクチンが好例です。HIV感染では、性交渉前のHIV治療薬投与により、感染から身を守る効果が知られており、治療薬はそのような目的でも使用されています。
これら、2つの予防法は、コロナウイルスの予防を考える上でも大切なポイントです。
有効性が示されたものはない
前者の暴露後の発症予防では、暴露が見えないケースで行うことはできないという限界はありますが、広く一般の方に行うのと比べて、対象者を絞り込むことができます。例えば、コロナウイルス感染者と実際に接触の多い、感染者の家族を対象に薬を投与するようなやり方です。
これは、トランプ大統領が「予防」で内服していると伝えられたヒドロキシクロロキンで実際に臨床試験が行われており、現在進行中です。この試験では、同居の家族に感染が見つかった方や、診療で暴露をした医療従事者が対象となっています。このような試験で有効性が確認されれば、今後「薬による予防」という選択肢も考えられるかもしれません。
しかし、現在のところは、有効性が確認された薬剤というのはありません。これについては、民間療法とも言われるような乳酸菌やビタミンのサプリメントも同様です。「ウイルス感染予防に有効」などという宣伝文句が掲載されてしまっているものも見受けられますが、何一つその有効性が示されたものはありません。
Comment