どのようなお酒を飲むのかは個人の自由ですし、蒸留酒を中心にアルコール度数が高い商品はいくらでもありますから、メーカーはここまで消費者に配慮する必要はないとの意見もあるでしょう。筆者も最終的には個人の判断ではないかと思いますが、ストロング系チューハイが抱える問題は少し複雑です。
日本の酒類市場は過去20年間、基本的に縮小が続いており、酒類メーカー各社は苦戦を強いられています。酒類市場の縮小は人口減少や若者のアルコール離れがなどが原因といわれていますが、もっとも大きな要因となっているのが日本人の所得低下です。
市場が縮小するなかで、とくに価格の高いビールのシェアが激減する一方、価格の安い発泡酒、さらに価格の安いリキュール類などのシェアが急拡大しており、消費者の好みが急激に低価格な商品にシフトしているのです。
お酒の値段は買う場所でずいぶん変わりますが、ビールの場合、1本あたり200円程度(350ml)になってしまいます。日本人の実質賃金は低下が続いていますから、おいそれと大量に買える値段ではありません。一方、新ジャンルのビールですと100円台前半ですし、ストロング系チューハイですと、アルコール度数が2倍以上でさらに安いケースもありますから、手軽に酔いたい人にとってはうってつけの商品といえます。
ウイスキーなど度数の高いお酒を購入することには少し抵抗がある人でも、缶に入ってビールなどと同じ棚に並んでいると心理的なハードルが下がります。こうした商品が依存症の原因になりやすいという指摘も理解できる部分があります。
しかしながら、日本人の所得が下がっていることがストロング系チューハイのヒットに関係しているのだとすると、この商品の販売を自粛しても、問題を根本的に解決できるわけではありません。今年の10月には酒税法の改正がありますが、缶チューハイについては税率が据え置きとなっています。多くの人が健康的にお酒を楽しめるよう、酒税についても健康面からの議論が必要となるかもしれません。
前回記事「日本人にとって学歴が「不要なモノ1位」になってしまう理由」はこちら>>
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