新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの暮らしや働き方だけでなく、人生についての意識も変えてしまいました。これまでの“当たり前”は通用しない、コロナ後の社会がどうなるのか不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

人口減少と少子高齢化の日本を分析した『未来の年表』シリーズの著者として知られ、5月末に『「2020」後 新しい日本の話をしよう』を上梓した河合雅司さんに私たちに迫っている未来について、3回にわたって伺いました。

第一回「女性の働き方の未来」はこちら>>
第二回「人口減少によって訪れる未来」はこちら>>


介護は私たちがもうすぐ直面する大問題!


人口が急激に減っていく日本の未来はどうなるのか? 

前回までは、働き方や社会・サービスの変化について見てきましたが、もっともわかりやすく、しかも目に見えて変化していくのは、子どもの数が減った家族の姿であり、また思いのほか長生きしそうな私たちの老後ではないでしょうか。

40代ともなれば、親の介護中の人も少なくないでしょう。まだ両親とも健康だという人も、いずれ訪れるこの問題に無関心ではいられないはずです。
 
日本では、高齢化により介護保険財政がひっ迫、介護に携わる人材の不足もすでに深刻です。特別養護老人ホームに入所しようと思っても、まずは入所待機者にエントリーしなければならないという状況は相変わらずです。
2019年4月時点では待機者が29万人でしたが、2025年には43万人になるという推計もあります。希望する人が全員、施設に入居できるようになることは見込めず、今後も介護難民が増え続けていくことになるでしょう。

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「老老介護」という言葉を聞いたことがあると思います。
介護される側もする側も65歳以上という組み合わせは、要介護者がいる世帯の、実に50%以上を占めているのです。さらに、どちらも認知症という「認認介護」さえ珍しくありません。

 

 
現政権は、在宅での介護を推奨しようとしていますが、これには無理があります。介護を理由に休職したり、離職するのは女性のほうが多いというのが現実です。ただでさえ働き手が減っていく時代に、貴重な人材である女性が介護のために仕事を辞めざるを得ないというようなことは、社会全体にとって不利益でしかありません。

政府も企業も、誰もが介護を抱えながらも働き続けられるような施策を進めるべきです。そうした意味では今回のコロナ禍による外出自粛で広まったリモートワークなどは、解決策の一つではないかと思います。

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他人事じゃない、育児と介護のダブルケア

これから介護に直面する世代にとって、頭の痛い問題がもう一つあります。
最近は晩婚・晩産の傾向にありますが、晩産化によって、親の介護と育児が同時にやってくる「ダブルケア」のリスクが高まっているのです。
 
かつて日本では、女性の平均初婚年齢は20代前半。30歳くらいで子どもを2人以上持つのが一般的な家族像といえました。ところが、晩婚化が進んだ現代では、女性が第一子を出産する時点ですでに30代後半というケースも増えています。

そうなると、まだ子どもに手がかかるときに、親の介護もしなければならなくなる可能性が生じます。本人が40〜50代前半だとしたら、会社でも責任ある立場となって多忙な時期であるかもしれません。

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また、兄弟・姉妹の数も減って、一人っ子同士の結婚も少なくありません。夫婦それぞれの親の介護が重なり、ダブルケアどころかトリプルケア以上になる恐れもあります。それを各自が在宅でなんとかするというのはとても無理でしょう。やはり、希望する人がみんな集中して介護を受けられる、高齢者向けの介護施設を充実させなければならないと考えます。

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年金はもらえます!でも、いつの時代も年金だけでは暮らせない


人口動態の変化は、私たちの老後にも影響してきます。長生きすればそれだけ老後の生活費がかかるのは当然ですが、「人生100年時代」などというキャッチフレーズが飛び交い、昨年は、“老後資金2000万円問題”も話題になりました。不安を煽られている印象です。

若い世代が減って高齢者だけが増えていくことから、「年金制度は崩壊するだろう」「私たち世代は年金をもらえないのでは?」といった声も耳にします。ですが、年金は公的制度なので、なくなることはありません。

年金の給付水準は「マクロ経済スライド」という仕組みによって調整されています。その時々の人口や平均寿命に応じて給付金額を変えるというもので、これによって将来、現役世代の負担が重くなりすぎることを防ぎます。

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したがって、もらえる年金額は今後、減っていく可能性が大きいといえます。それは仕方のないことです。よく、「かつての高齢者は100円の掛け金に対して5000円もらえていたのに、これからの高齢者は2000円しかもらえない。不公平だ」といった、年金の世代間比較がされますが、これはあまり意味がありません。支払った保険料以上の給付額になり、損をするわけではないからです。いつの時代も年金だけで暮らしていけないのは同じであり、何らかの自己防衛は必要です。

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例えば貯蓄だけではなく、あまりお金をかけずに暮らすことです。あるいは助け合って暮らすことも考えていくべきです。ひとり暮らしの高齢者が増え、公的サービスが縮んでいくことは明らかなのですから、地域のコミュニティなどで“共助”によって支え合う仕組みが、どうしても必要となります。

年金の心配をするよりも、こうした自助に向けた工夫や、共助のための関係を築くことを、ぜひ現役時代から心がけてみてください。

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『「2020」後 新しい日本の話をしよう』河合雅司著 講談社刊 1300円(税別)

コロナで一変した日本はどうなる?
もう「コロナ前」には戻れない。それでは、この「2020」後の日本はどうなるのか。人口減少、少子高齢化が進む日本を大予測してベストセラーとなった『未来の年表』の著者がわかりやすく読み解きます。


河合雅司/かわいまさし
作家・ジャーナリスト、人口減少対策総合研究所理事長。高知大学客員教授、大正大学客員教授、日本医師会総合政策研究機構客員研究員、産経新聞社客員論説委員、厚労省をはじめ政府の各有識者会議委員なども務める。1963年、名古屋市生まれ。中央大学卒業。2014年の「ファイザー医学記事賞」大賞ほか受賞多数。主な著書に『未来の年表』『未来の年表2』、『未来の地図帳』(いずれも講談社現代新書)、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

構成/黒澤彩
イラスト/白井匠

 

第1回「『未来の年表』著者・河合雅司さん「コロナと少子高齢化が女性の働き方を変えていく」#コロナとどう暮らす」はこちら>>
第2回「『未来の年表』著者が解説。コロナでわかった“便利の終わり” #コロナとどう暮らす」はこちら>>