ビジネスコミュニケーションは親密さより安心と信頼が大事
初対面の商談相手や、部下、上司との関係を円滑にするためにも質問はとても重要なコミュニケーションツールです。なぜかこの人に質問されるとつい何でも話したくなる、という人がいます。そう。私たちは「答えたい人には詳しく、深いところまで答える」んです。逆を言うと、信じられない人、自分を受け入れてくれなさそうな人、敵対心丸出しの人の質問には身構えてしまい、表面的な答えしかしなかったりします。
では相手に信頼してもらうためにはどんな質問がいいのでしょう。まだ知り合って日が浅い仕事相手の場合、あなたがどんな仕事をする人なのか、どんな人柄なのかを探っている段階です。信頼関係を築くまでは、お互いに害がないニュートラルな質問と、一緒に仕事を成功させるための誠実さが伝わる質問で会話を重ねたいですね。気をつけたいのは、早く親しくなりたいあまりに「相手に近すぎる質問」や、思いつくままに「相手に遠すぎる質問」をしてしまうことです。
その質問、密です!相手に近すぎる質問は信頼関係ができるまでNG!
大惨事になりかねないのが相手に近すぎる質問です。プライベートに関する質問、相手企業の人事や他社とのプロジェクトに関する質問などもそれにあたります。
【相手に近すぎる質問例】
状況:初対面or会って日が浅い仕事相手との雑談で質問する。
これはNG!
「あなたのインスタグラムを拝見したのですが、ご自宅は(地名)なんですね?」
個人のSNSについては、相手が著名人やインフルエンサーじゃない限り、初対面では質問も感想も言わない方がいいでしょう。それがオープンな情報でも、です。自分は聞かれても平気だからと、こういう質問をついしてしまいがちな人は、少し距離を離れてニュートラルゾーンから話題を選ぶ必要があります。上の質問を、会社のHPやSNSで発信されている内容に関することに言い換えてみましょう。
→これならGood!
「御社のインスタグラムを拝見したのですが、社屋が(地名)に移られたんですね?」
ターゲットを個人ではなく相手の会社にするだけで「興味を持ってくれているんだな」と好感度up!につながります。もし、うっかり近すぎる質問をしてしまい、相手が答えを濁したら、それ以上は自分からは聞かない(広げない)。過度に謝ったり「失敗した!」という顔はせず、さらっと話題を変えましょう。プライベートに関しては、会合を重ねる中で、あなたを信頼して話す人もいます。あくまでも相手の出方を優先にしましょう。
相手に遠すぎる質問は信頼も遠さげる
相手に遠い質問というのは「本当に一緒に仕事をしたいのかな?」と思わせてしまう質問です。会ったばかりの相手でも、質問に自分の誠実さや情熱を込めることができます。思いつくままについ、相手企業やプロジェクトに興味がない印象を与える質問をしていませんか?
【相手から遠すぎる質問例】
状況:人気スポーツウェアブランドとコラボ商品を作ろうと、第一回ミーティングで質問する。
これはNG!
「この時期だからこそ、マスクを一緒に作らせてもらえませんか?」
相手の回答「マスク事業はだいぶ前から進めていまして、来週UVマスクが発売なんですが…」
これでは、いくらやる気があっても、「それくらい調べればわかるのに……」と思われてしまいますね。一緒に仕事をしたい企業の活動やHPやプレスリリース、メールでのやりとりの中に、大切な情報がないか事前にチェックしましょう。そうすれば自然と相手から遠い質問ではなくなるはずです。
→これならGood!
「来週、御社が発売されるUVマスクに加え、弊社の技術で、運動中も呼吸が楽なマスクを第二弾としてご検討いただけませんか?」
自分は調べていたのに、上司や部下へのシェアができていなくて、チームの誰かが「なぜ今、その質問??」というようなことを聞いてしまうこともありがちです。仕事相手には、敬意と自分の熱意が伝わる質問をしたいですね。
どうしても質問が思い浮かばない!そんな時は「確認質問」「視点を変えてみる」
何も質問しないままだと、本当に理解しているのかが相手に伝わりません。それでも、どうにもこうにも質問が思い浮かばない!という人は、①相手が使う表現を具体化する ②そのまま聞き返す、という2種類の「確認質問」をしましょう。これ、実はとても大切で、質問力が高い人は必ず取り入れています。双方の認識ミスを防ぐためです。この「そのまま確認」に慣れてきたら、次は、相手の話すポイントを「敢えて違う角度、違う言い方」で確認しましょう。「今回は丸の内本社で開催します」と言われたら「承知いたしました。前回の新宿支社ではないということですね?」というようにです。
【確認の質問例①具体化】
状況:「なるべく早く提出します」という部下に質問をする。
これはNG!
「じゃあお願いね(=質問せず会話を終わらせる)」
あなたの「なるべく早く」と相手の「なるべく早く」の感覚は全く同じでしょうか?あなたは「一両日中」と思っても、相手は「今週いっぱい」と思っているかもしれません。
→これならGood!
「OK。じゃあ明日までにもらえると思ってていいかな?」
と、具体化してお互いの認識を合わせましょう。
【確認の質問例②そのまま返す+α】
状況:「セミナー会場は禁煙にしたい」というクライアントの要望に自社も同意。それに対して質問する
→これはGood!
「承知いたしました。セミナー会場は禁煙ですね?」
相手の言ったことをそのまま返す基本の確認質問です。ではこの質問を発展させ、さらにいい質問にするために、会場内禁煙で開催されたイベントをイメージしてみましょう。
→さらにGood!
「承知いたしました。建物の外に喫煙スペースはあるか管理会社に聞いてみましょうか?」
会場内は禁煙→タバコを吸いたい人は喫煙スペースがあるか探すだろうな、と参加者の視点で見ると派生する質問が浮かんできます。
視点の変え方として、自分は質問が思い浮かばないけど、自分の上司ならここを突っ込んできそうだな、と社内の別の人の視点で質問を考えてみるのもいいと思います。習慣として、大切な仕事の前には、「自分はこのミーティングで何を一番知りたいのか、何を確認したいのか」を書き出しておくといいですよ。そうすれば、その話が出なかった時、その話についてもっと知りたい時に質問が浮かんでくるはずです。
あとは質問をするだけです
いくら頭ではわかっていても、実際に質問をしないと質問力は伸びません。今回のコラムについても何か質問や調べたいことが1つでも2つでも浮かんだなら嬉しいです。今回のポイントは、プライベートの場面でも使えますので、取り入れてみてくださいね。あなたが質問することで、プロジェクトがスムーズに進み、トラブルは食い止められ、自分の知識も増える上に、相手の信頼をも勝ち取ることができます。早速、実践してみましょう!
今回のコラムのまとめ
「自分の質問で相手に引かれてしまわないか不安」
解決のヒント:
大勢にメリットがある質問か自問する。
相手が安心できる「近すぎず、遠すぎない」質問をする。
相手に聞く必要がない質問は自分で調べる。
「何を質問したらいいかわからない」
解決のヒント:
相手の言うことを繰り返す「確認質問」をする。
視点や言い方を変える。
事前に、自分がこの会合で一番おさえたいポイントを書き出す。
構成/幸山梨奈
前回記事「なぜ人はあなたの話に飽きるのか。仕事でもSNSでも「離脱」されないためのヒント」はこちら>>
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