重症者や死亡者が少ない理由

 

また、実際に「入院患者」だけでなく重症者や死亡者数が少ないことも見て取れると思います。以前の状況であれば、2割近くの重症者が発生していましたが、現在は重症者の割合は1桁の状況です。

この要因の一つは、感染者の平均年齢にあります。流行初期と比べると、感染者の平均年齢は少なくとも20歳ほど若返っています。これは、現在クラスターが若者の街で発生していることも要因として考えられますし、高齢者が防御を固めていることも影響していると思います。

実際に、感染流行初期には高齢者施設でのクラスターが複数報告されていましたが、ここ最近の報告はほとんどありません。これは、各高齢者施設で入念な感染対策が行われていることの現れでもあります。

このため、経済を回しながらも、致死率の高い高齢者を守る、命を守るという目標は今のところ達成しているとも言えるかもしれません。
 

 

アメリカの状況と比べてどうなのか

 

この若者に感染が広がる傾向は、アメリカの現状にも見られています。アメリカで報告されている感染者数は桁が違い、日本とは比べ物になりませんが、アメリカでも重症者や死亡者の割合が低下していることが指摘されています。

この背景には、日本同様に、1〜2ヵ月前の感染者と比べて平均年齢が15歳ほど若返っている状況があります。クラスターの発生も高齢者施設で目立っていた頃とは違い、現在はバーやナイトクラブが流行の中心地となっています。ここで若者たちに感染が広がり、爆発的に感染者は増えているものの、重症者や死亡者の「割合」自体は減っているのです。しかし、そもそも分母が大きいため、重症者の数自体は増えてきており、フロリダやテキサスなどの州では、すでに集中治療室のベッドが枯渇してきていることが伝えられています。

また、若い方が多いので、死亡者数も減少していますが、今後増加してくる見込みが伝えられています。

米国では、既に3〜5月だけで例年よりも12万人ほど多くの死亡者(超過死亡)が出てしまったことが報告されています(参考1)。これらは、直接的ないし間接的なコロナウイルス感染症の影響であることが示唆されており、今後もそれが持続してしまわないかどうかの分岐点に立たされています。


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