再び行動自粛すべきなのか? 

「第一波」とどう違う!?新型コロナ感染者増加【医師の見解】#コロナとどう暮らす_img0
 

それと比べれば、日本は感染者数も限定的です。若者を中心に感染が広がっている限り、経済を優先し、感染症の流行は放っておいてもいいでしょうか。

 

答えは明確に「ノー」と言えます。先ほど、高齢者の防御が固められたと書きましたが、どんな防御も完璧にはなり得ません。例えば、80歳の方の致死率は15%とも20%とも言われます(参考2)から、80歳の方からすれば、それだけ高い致死率を聞けば、怖くて自宅から出られなくなることは明白です。しかし、生活のためには、買い物が必要なこともあります。生活の支えのために、若いご家族や介護職員の方々との接点がどうしても必要になります。もちろんそういった方々にも入念な感染対策を行っていただいていると思いますが、感染症が蔓延してしまえば防ぎようがなくなり、ウイルスはやがてその世代にも入り込みます。

このため、高齢者に感染症が回っていくのは最後の最後と考えられますが、感染症が蔓延すればそれは防ぎようのない事象になっていきます。そして、その方達が重症化するのは感染してから約2週間経過した後、命を落とす方というはその1ヵ月も先の出来事となります。

このような結末を変える治療法があれば良いのですが、残念ながら死亡を回避できるような魔法の薬はまだ見つかっていません。

世論からは、「重症者や死亡者が出ていないのだから、気にしない方が良い」という声も聞こえてきますが、本当に死亡者が出るのを待っていていいのでしょうか。死亡者を指標とするのであれば、それは1ヵ月も遅れた指標です。死亡者が増えた時というのは、すでに高齢者世代にまで満遍なく感染が広がってしまったとき。そうなってからでは、もう多くの人の命を助けることはできず、遅すぎるのです。

「感染者数はあてにならない」という声もありますが、医療機関で働いている感覚としても、一時期の静まりとは異なり、再び、ちらほらと感染者が入院するようになってきて、これからまた忙しくなりそうだなと感じさせる、そんな状況です。

このようにあらゆる指標が「遅れる」ため、感染症対策は、科学的な推測をもとに、一足早く行う必要があります。「推測は推測に過ぎない」「実測値しか信じられない」という心境も理解できますが、それでは確実に「遅れる」のです。

現在既に、手指衛生やマスク装着など、様々なところで種々の対策が行われていると思います。「クラスター対策」も保健所の方々により継続的に行われています。しかし、その状況でも感染者が増え続けているのですから、プラスアルファが必要なことは明白です。感染経路不明な感染者が次々と発生しており、感染は「夜の街」から「昼の街」にも広がりました。「クラスター対策」だけではもはや限界を迎えつつあるのです。

ソーシャルディスタンスを徹底する、マスクを徹底する、電車の乗車率を抑える。経済を回しながらもできるプラスアルファの取り組みは様々に考えられますが、全ての人が従うことはないという宿命も共存しており、限界があります。このような”New Normal”でもこの増加傾向が止められなければ、あとは人の動きを止めるしか方法はありません。

そのような対策がとられると、「経済を犠牲にするのか」という声も聞かれるようになりますが、公衆衛生策は、経済との二項対立ではありません。これは経済を守るための手段でもあります。なので、目の敵にはしないでください。そして何より大切な命を守るための、最も有効な手段です。ワクチン、治療法が確立すれば、もしかすれば公衆衛生策なしにも命を守ることができるようになるかもしれません。しかし、科学の発達を待つ間は、これしかないのです。
 

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参考文献
1.    Preliminary Estimate of Excess Mortality During the COVID-19 Outbreak - New York City, March 11-May 2, 2020. MMWR. Morb. Mortal. Wkly. Rep. (2020). doi:10.15585/mmwr.mm6919e5
2.    Wu, Z. & McGoogan, J. M. Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China. JAMA (2020). doi:10.1001/jama.2020.2648