「正確性は」といったん止まることが命を助ける

「コロナうがい薬問題」から医師が考える「情報の感染力」#コロナとどう暮らす_img0
 

この拡散行動は、「ちょっとした工夫」でだいぶ改善されることも報告されています。

 

米国で行われたある研究を紹介します(参考3)。この研究では、被験者たちが2つのグループに分けられました。被験者には、半分がCOVIDに関する真実の内容、半分が偽の内容という構成で、数多くのニュースが伝えられました。もちろんその真偽は知らされないままです。最初のグループにそれらが伝えられ、このうちどの内容をシェアしたいと思ったかが聴取されました。すると、真実の内容から47%、偽の内容から43%が選択されました。

次のグループには、このタスクを課す前にCOVIDと関連のないあるニュースについて、「内容の正確性を評価してください」というタスクが課されました。その後、最初のグループと同様、COVID関連のニュースを見せられました。すると、このグループではより多く真実の内容を拡散していたという変化が見られました。

こういった研究から、「情報の正確性はどうか?」と思考を巡らせる停止点を持つことだけでも、不意に誤情報の拡散に関わることを防げることが分かってきました。

また、もう少し余裕を持つことができれば、この情報の持つメリットは?デメリットは?と両者の天秤に思いを馳せることで、より正確に情報を嗅ぎ分けることができるでしょう。
 

友人と話してみるだけでもいい


それが一人で難しければ、信頼のできる友人に話を持ちかけ議論をしてみることも助けになるかもしれません。

あるいは、新聞も雑誌もニュースも信じられない。そんな方は、公的機関のウェブサイトを頼ってみてください。米国CDCやWHO、厚生労働省といった公的機関は、最新のエビデンスの質を吟味して、慎重な情報発信を行っています。             

情報があふれる中で、ウイルスについて深く勉強すればするほど、分からないことだらけだと途方にくれてしまうかもしれません。専門家にとっても、実際にまだわからないことだらけなのです。

振り返ってみれば、まだこのウイルスとヒトが出会ってから、まだ1年も経っていません。分かったようなふりをする記事、情報にこそ注意をしてください。

しかし、分からないことだらけのこの問題に、社会としてどう挑むのか。ウイルスは人にとても良いレッスンを投げかけてくれていると思います。

こんな時代を生きられる世代もそう多くはないかもしれません。困難な局面にも直面しなければならない日々だと思いますが、ピンチはチャンス。皆で助け合い、学んでいくその先に、より良い未来が待っていると信じています。
 

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参考文献
1    Satomura K, Kitamura T, Kawamura T, et al. Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: A randomized trial. Am J Prev Med 2005. DOI:10.1016/j.amepre.2005.06.013.
2    Sethuraman N, Jeremiah SS, Ryo A. Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2. JAMA - J. Am. Med. Assoc. 2020. DOI:10.1001/jama.2020.8259.
3    Pennycook G, McPhetres J, Zhang Y, Lu JG, Rand DG. Fighting COVID-19 Misinformation on Social Media: Experimental Evidence for a Scalable Accuracy-Nudge Intervention. Psychol Sci 2020. DOI:10.1177/0956797620939054.