ここのところ感染者数が増加の一途を辿り、政策についての議論が加熱しています。暗いニュースが続く一方で、明るいニュースと言えば、新しい治療薬やワクチンのニュースかもしれません。しかし、治療薬のニュースとは異なり、ワクチンは試験の途中経過のニュースばかりが続きます。開発はどこまで進んでいるのでしょうか。私たちの手元に届くのはいつになるのでしょうか。山田悠史医師に、世界のワクチン開発状況を解説してもらいました。

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人類史上最高速度!? 進む、ワクチン開発


パンデミックにやきもきする日々を送っている我々にとって、ワクチン開発のプロセスはとても遅く感じられるかもしれません。しかし、実はワクチンの開発速度はここまで人類史上最高記録を塗り替え続けてきています。

 

例えば、トップランナーの一つであるモデルナという会社が製造したワクチンは、病原体が特定され共有されてから、45日でワクチンの製造を終え、臨床試験用に届けられています。また、たった66日でワクチンが実際に人の被験者に投与されました(参考1)。これらは、紛れもなくいずれも歴史的な快挙です。

なぜなら、普通であればこれらは本来、何日や何カ月単位で済むことではなく、何年もかかるプロセスであったからです。それをこの緊急事態に直面して、たった66日で実現してしまったというのは、科学の力以外の何物でもなく、これだけですでに驚くべきことです。

また、このモデルナが作った核酸ワクチンという種類のワクチンは、技術としては存在していたものの、これまで人に用いられたことのない新技術。これがすでに当たり前のように各社で行われ、ヒトへの投与が開始となっているという事実にもまた、驚かされます。

現在、モデルナの他にも、イギリスのオックスフォード大学やアストラゼネカ、中国のカンシノなど複数の企業・学術機関がすでにワクチンの試験を行っています。人への臨床試験がすでに行われているワクチンは25種類(2020年7月28日時点)にも上り、そのうち6つは最終試験である第3相試験のフェーズまで進んでいます。

また、人の臨床試験にはまだ至っていないものの、基礎実験の段階のものはすでに139種類(2020年7月28日時点)にも及びます。一つの病原体に対してこれだけ多くのワクチンが活発に研究されているということもまた驚くべきことで、人類にとってこの病原体がいかに驚異であり、ワクチンがどれだけ求められているかということがわかります。

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