「古くて新しい治療薬」の可能性【医師の解説】#コロナとどう暮らす_img0
 

「国内2例目の新型コロナ治療薬認定」
最近、こんな記事をご覧になった方も多かったかもしれません。2例目の治療薬として認定されたのは、「デキサメタゾン」という薬剤。実は、とても歴史のある薬です。今回の記事では、1つ目の薬は何だったのか、2つ目の薬との違いや立ち位置など、新型コロナウイルス感染症治療薬の現在地についてお伝えできればと思います。

 


認定1号となったレムデシビルは、10年前からあった


新型コロナウイルスの治療薬として最初に認定を受けたのは、ギリアドという会社の作ったレムデシビルという名前の薬剤です。

このレムデシビルの「ビル」という名称は英語表記で”vir“と書き、抗ウイルス薬に共通して命名される接尾辞です。例えば、皆さんご存知タミフルの一般名はオセルタミビル。これも同様に「ビル」がついていることが分かります。このような共通点から、医師にとってはレムデシビルが何の薬かを知らなくてもウイルスの治療薬なのだなということは想像がつきます。

レムデシビルという薬剤は、元々は今から10年ほど前にC型肝炎ウイルスと呼ばれる肝臓に感染する病原体に対する薬剤研究の中で誕生した薬です。残念ながらC型肝炎ウイルスには効果を発揮できませんでしたが、その後エボラウイルスと呼ばれるウイルスに有効な可能性が示唆され、期待を持たれてきました。

このC型肝炎ウイルスとエボラウイルスの共通点は、RNAウイルスという種類のウイルスであること。このレムデシビルという薬剤は、RNAウイルスの増殖過程を抑える薬なのです。

その後、同じRNAウイルスであるSARSやMERSに対しても動物モデルで有効なことが示されており(参考1)、今回の新型コロナウイルスでもその有効性を検証される運びとなりました。

薬の有効性を示すためには、動物実験だけでは不十分で、実際にその感染症にかかってしまった人に投与を行い、偽薬と比較して致死率を改善する、あるいは治癒までの時間を短縮することを証明する必要があります。

実際にレムデシビルは、1000名を超える感染者を対象に比較試験が行われました(参考2)。その中で、治癒までの時間が4日ほど短縮されることが示されました。また、致死率では統計学的な差を示すことができませんでしたが、14日後の死亡率に良い傾向が見られました。

こういった試験の結果を根拠に、多くの先進国で使用が認められる結果につながっています。しかし、致死率には必ずしも有意な差が認められていない状況であり、今後も「命を助ける」治療を探し続ける必要があります。

また、現在のところ、このレムデシビルには注射薬しかありませんので、医療機関の中でしか用いることができません。このため、レムデシビルの「吸入薬」も現在開発中です。

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