破産者情報サイトが写し出す、日本の「他人の失敗を許せない」国民性_img0
 

破産者の個人情報を掲載しているサイトに対して、個人情報保護委員会が運営停止命令を出しました。破産者の名前や住所といった情報はすべて官報に掲載されているので、誰でも見られる完全な公開情報ですが、このサイトは、破産者から同意を得ていないということで個人情報保護法違反との解釈が行われたようです。

 

破産者情報のサイトについては、以前もこのコラムで取り上げたことがありますが、非常に重要なテーマだと筆者は考えていますし、今回、正式に違法認定されたこともあり、再度、議論してしてみたいと思います。

破産者情報のサイトは昨年あたりからネットで話題になり、一部のサイトは批判を受けて閉鎖に追い込まれましたが、海外にサーバーを設置するといった形で運営を続けているところもあります。今回、違法認定されたサイトの運営者は不明ですが、明らかに興味本位でサイトが作られており、正当な目的があるとは思えません。したがって、何らかの措置が必要だったのは間違いないでしょう。

しかしながら、誰もが見られる公開情報をネットで再掲載したことが違法ということになると、公開されている個人の略歴などを掲載しても、違法になってしまう可能性がゼロではありません。一部の専門家からは公開情報の利用制限につながるとして慎重論も出ているようです。
 
また、それ以前の問題として、多くの人は、個人の権利を侵害する(と判断される)ような情報を、なぜ役所が誰でも閲覧できる状況で公開していたのかという点で疑問を持ったのではないでしょうか。筆者は、まさにこの部分にこそ、日本社会が改めるべき風潮が反映されていると感じます。

役所が自己破産した人の個人情報を一般に公開しているのは、破産の手続きにあたって、債権者(その人にお金を貸している人)などに告知するためです。あくまで事務的な処理のために破産者の情報を掲載していますから、ウラを返せば、自己破産というのは、誰でも普通に利用してよい制度だということです。

もちろん、お金を使いすぎてしまうことは一般論としてよいことではありませんが、事情があって借金を返せなくなったり、支払うべきお金が払えなくなった場合には、破産という手続きを経ることで債務から解放されます。こうした制度がないと、借金でがんじがらめになって、場合によっては自殺する人などが出てきてしまう可能性があり、債務者を救うために自己破産の制度は存在しています。

つまり、自己破産は誰でも利用できる権利であり、それを利用したことで、何ら懲罰的な対応をされるようなものではないのです。そうであればこそ役所は、事務手続きを円滑に進められるよう、破産者の個人情報を誰でも閲覧できるようにしてきました。

 
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