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話題の癒しスポット!表参道の空に浮かぶ“循環する”菜園【野村友里さん】

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野生の状態に近づいていく菜園


eatrip soilの菜園を見て不思議に思ったのが、植物が列になって並んでいないこと。

一般的な畑だと作物の品種ごとに並べて植えますが、ここでは様々な野菜やハーブが入り混じるようにして生えています。しかも、あちこちにセロリが植えられていたりと、同じ野菜が点在していたりするのです。

「実は、私も理由はよくわかっていなくて(笑)。というのも、最初の畑づくりはグリーンやランドスケープのディレクションなどをされているSOLSO(ソルソ)さんにお任せしたんです。植物を選ぶのもほぼお任せで、私からは『食べられるもの、料理に使えるものを』とリクエストしただけ」
 

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そんな話をしていると、木苺を食みに鳥がやってきました。よくよく見渡せば、ちょうちょや蜂の姿も。雑多に入り混じった畑は、虫や風の力で種が落ち、またさらに複雑な配置を生みだしていくのではないでしょうか? きっと年月が経つほどに、どんどん野生の姿に近づいていく、そんな印象を受けました。

 

「風の力は大きいかもしれないです。風がそよぐというのはとても大切なこと。ここは谷風が吹くんですよ。渋谷方面が谷で、キャットストリートは川。ちょうど対流がいいんです」

どんどん自然の姿に還っていく畑。その緑のパワーは多くの人を惹きつけます。

「この菜園はだれでも入ってきていいオープンな空間。フロアにあるカフェでコーヒーを買ってきてもいいし、うちのお店でも酵素ジュースなどを売っているので、それを飲んでいただいてもいい。たまに寝ている人もいますよ(笑)。

テラスが西向きなので、太陽が沈むと空がピンク色に染まるんです。そんな空を眺めていると今度は月が昇ってくる。満月の日は本当にすごい景色で。月を見るために訪れる友人もいるくらいです」

都会の真ん中にありながら、ダイナミックな地球の営みを感じられる空間。ここにいると緑の向こうに並ぶビルが不思議なものに見えてきます。
 

土だけではなく、人も循環していくお店


現在も世界を騒がせているコロナウイルスが流行したのはeatrip soilがオープンしてまもなくのこと。4月の緊急事態宣言を受け全館休業となったGYREの中で、eatrip soilだけが“暮らしのライフライン”として週3日ほどの短縮営業を続けてきました。

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「GYREの方が本当に理解してくださって、ここのために館のドアを開けてくれたおかげで、たくさんの方が来てくれました。子どもがリモート授業になって、多くの学校で『植物を育てる』という課題が出たみたいで。あとはお庭やビルを持っている方もよくいらっしゃいました。自粛期間中は特に、菜園を始められた方も多かったですよね。この時期に菜園を始めるというのは、とても意義深い気がしています」

多くの人の価値観を変えたコロナウイルスの流行。
野村さんのまわりでも、都市と地方の二拠点生活を始めた人が多かったそうです。

「私は東京生まれでずっと東京に住んでいますが、東京に作用されずにどうやっていったらいいかを、みなさんと、仲間と考えたいと思ってできたのがこのお店です。これからは大量生産・大量消費の時代じゃない。この流れは止められないし、そうしないと地球に無理がきてしまう。

東京一極集中ではなくて、今は地方にも面白いコミュニティができつつある。そうなったときに、自分がどう暮らしていきたいか。二拠点生活をするにしても、どういう仲間と住みたいのかを考えたときに、ここが価値観の合う人たちと出会うはじまりの場所になったらいいと思っています」

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eatrip soilで取り扱っている食材や調味料は、さまざまな地方に根を張り、野村さんと同じ価値観を持つ仲間たちが手がけるもの。ここで売っているのはただの商品ではなく、生産者とのつながりでもあります。

実際に、ここで商品や野菜を見たお客さんが、後日生産者さんの元へ足を運ぶということがあるそうです。

「サステナビリティとか、大きな声でわーっと言うことももちろん大切なのですが、それだとなかなか伝わらない。だから小さな輪をぎゅっとつくっていくことも大事だなと思っていて。私は、小さくても確かな輪をつくっていきたいんです」

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土から芽が出て野菜になり、種をつけてまた別の地で芽を出すように、このお店を訪れた人が野村さんや生産者の価値観に触れ、また別の地でその輪を広げていく。

eatrip soilは野菜にとっても人にとっても、そのはじまりの“土壌”となるお店なのでした。

<SHOP DATA>
eatrip soil

住所/東京都渋谷区神宮前5-10-1表参道GYRE4階
電話/03-6803-8620
営業時間/12:00~19:00 月曜定休
HP&オンラインショップ/https://eatripsoil.com/
Instagram/@eatripsoil

アイコン画像

野村友里(のむら ゆり)

eatrip主宰。料理人。原宿の古民家レストランeatripを運営するほか、ケータリングフードの演出やイベント企画、ドキュメンタリー映画の監督など、食にまつわる活動は多岐にわたる。著書に『Tokyo eatrip』(講談社)など。

写真/衛藤キヨコ
取材・文/宮島麻衣
編集/片岡千晶(編集部)
 

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