めまいの原因。内耳で何が起きている?

 

さて、肝心のめまいの原因ですが、実はここではご紹介しきれないほど非常に多岐に渡ります。最も頻度の高い原因でも、めまい全体の10%にも満たないと報告されており(参考1)、めまいと言えばコレというような病気がないことがわかります。例えば、先ほどご紹介したメニエール病などは聞き覚えのある病名だったかもしれませんが、医師として診断に難渋することもしばしばです。

 

めまいの原因を担う主要な体の部位は、耳の奥にある「内耳」と呼ばれる場所です。内耳は前庭や三半規管といった部分に分かれますが、そこには体の傾きや加速度を感じ取る機能が備わっています。例えば目を瞑っていても、体が傾いたときに「体が今傾いた」と感じとることができるのは、内耳の働きのおかげです。

この内耳の働きの秘密は、内部のリンパ液の流れ、そしてその流れでなびく毛(有毛細胞)にあります。実は、体の傾きに応じてこのリンパ液が流れ、毛がなびくという一連のプロセスが、傾きの感覚の鍵を握っているのです。この「毛のなびき」が信号となり神経を伝わり、脳にインプットが入ります。これで脳は体の傾きを察知することができます。

例えば、「つまずきそうになった」というシチュエーションでは、このインプットの後、反射的に運動のシグナルが脳から各筋肉へと伝わり、姿勢を立て直すという動作につながります。ここで、リンパの流れも正常に戻り、傾いているという信号も消えます。しかし、遊園地でコーヒーカップなどに乗ってリンパの流れの勢いが付きすぎると、流れが止まるのが遅れ、しばらく目が回った状態になります。

「回転性めまい」や「動揺性めまい」の症状がある人では、この信号系統が不適切に働いてしまっています。体が傾いていないにも関わらず、内耳にある毛が誤ってなびいてしまったり、信号を伝える神経が炎症を起こして誤った信号を伝えてしまったりしているのです。すると、視覚が捉える体の傾きと「傾きの感覚」の間にズレが生じます。これを「めまい」として感じることになります。