「夫の海外転勤帯同のため10年以上勤めた会社をやめました」(30代女性)
「転勤先でも仕事を続けたかったのですが、夫の会社に止められてしまって…」(40代女性)
みなさんの周りでも、こうしたケースを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか? ご自身が当事者ということもあるかもしれません。
私が共同代表を務めるWaris(ワリス)では「日本人海外駐在員配偶者(駐妻・駐夫)のキャリア継続に関する調査」を実施し、先日結果を公表しました。調査には379名ものみなさんにご協力いただきました。今回は調査を通じて分かった駐妻・駐夫のみなさんのキャリア継続の障壁や実態をお伝えします。
「仕事を辞める側」はやっぱり女性
駐夫(ちゅうおっと)という言葉に表されるように、最近では男性も配偶者の海外転勤にあわせて帯同するケースが見られます。ただ、今回の調査では回答者379名のうち男性は2%のみで、引き続き女性が多くを占めています。
帯同前後のキャリア継続に関しては約6割が「継続できていない」と回答しています。また、キャリア継続できていない人のうち約8割が「仕事をしたいができない」状態です。回答者は30〜40代が中心。働きざかりで就労意欲も高い人たちが仕事をできていない状況は社会的損失と言えます。
キャリアを中断した理由については「自分が働いていた企業・組織が海外での就業継続の仕組みがなかったため」が58%ともっとも多く、「ビザや法律上の手続きが困難(47%)」「配偶者の企業・組織が帯同者の就業を推奨しなかったため(38%)」と続きます。ビザや法律の問題は国による差が大きく、帯同ビザでの就労は雇用形態にかかわらず一切認めない国もありますし、だからと言って就労ビザについては取得要件が厳しく容易に取得できない場合もあります。
また、駐妻・駐夫が働くようになると、企業によっては帯同にともなう各種手当の支給がなくなり、高額な保険料や予防接種費用などが全額自己負担になってしまうことも。なかには企業が借り上げた住居や社宅からの退去を余儀なくされるケースもあります。駐在員配偶者が「働いていない」ことを前提に各種制度が設計されている点が大きな問題です。
働いていない状況そのものが心理的負担に
ではキャリア継続ができないことの負の影響を、回答者のみなさんはどのようなところに感じているのでしょう?「帰国後のキャリア継続が不安(67%)」「社会とのつながり、貢献が見出せないことが不満(63%)」「働くこと自体が好きなのにできないことが不満(59%)」といった項目が「経済的に以前より余裕がなくなっている(25%)」を大幅に上回り上位を占めています。フリーコメントでは「ブランクが長くなることにより帰国後の就職活動が難しくなるのではないか…」と心配する声があったり、ずっと共働きをしてきた人からは「片方が経済的自立を阻まれたことにより、夫婦関係に影響する」「家計から『お小遣い』をもらうことがストレス」との声もありました。
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