「かくれ貧血」と「むずむず足症候群」

「貧血には鉄」は本当?医師が語る「かくれ貧血」との違いと予防法_img0
 

さらに、もう少し鉄欠乏について掘り下げてみます。実は、生理で繰り返し鉄分が失われてしまう女性の中には、鉄不足は起こっているけれども貧血はない、という方もいます。これは巷では「かくれ貧血」と呼ばれたりもしているようですが、そのような医学用語は存在しません。貧血が「かくれている」というわけではなく、実際に貧血はないわけですから、この言葉は正確ではありません。

そもそも鉄がないだけで貧血がないのであれば問題ないのでは、と思われるかも知れませんが、鉄不足だけでも、体調に異変をきたすことがあります。

その代表例が「むずむず脚症候群」という病気です。これは読んで字のごとく「脚がなんだかむずむずして不快だ」という症状が出て、寝つけなくなる症状を指しますが、逆にこのような症状を経験する方では、「鉄欠乏かも?」と疑って検査を受ける必要があります。鉄欠乏があれば、鉄のサプリメントを飲むことで、むずむず足の改善が期待できます。
 

 

貧血の診断と治療。対応はあくまで原因次第


それでは、貧血を疑った場合に、診断はどのようにするのでしょうか。これは、先に説明したように簡単な血液検査で可能です。

実はこの検査、毎年の健康診断にも必ず含まれています。なので、毎年の健康診断で異常を言われたことがない、という人はおそらく貧血もないのだと予想できます。逆に、何の症状もなく、健康診断で初めて見つかったということが多く経験される病気でもあります。

いざ「貧血」と診断を受けたら、先ほどご紹介したような様々にある原因からどれが該当するか、より詳しい検査であたりをつけていく必要があります。治療がその原因によって様々だからです。例えば、鉄欠乏やビタミンB12欠乏は、血液検査で比較的簡単に診断することができます。

鉄欠乏であれば、まずは出血がないかを探します。あればその出血の原因を治療し、出血を止めることで改善が見られることになるでしょう。また、鉄のサプリメントをとることで、鉄不足も解消され、貧血が改善していくことになります。

一方、原因がビタミンB12欠乏であれば、ビタミンB12を補わなければ貧血は良くなりません。「貧血があるのなら鉄を取れば良い」とすぐにアドバイスをされてしまう場合がありますが、そのような方に鉄を投与しても残念ながら効果は全く期待できません。

これまで見てきたように、貧血にも様々な原因があり、ただ「貧血があったら鉄分を取れば良い」というわけではありません。あくまで原因次第。このため、貧血が見つかったら、医療機関を受診し、まずはしっかりとその原因を特定することが大切です。原因が分かってこそ初めて、適切な治療ができるのです。


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