願掛けや日頃の感謝を伝える場所として、さらに観光スポットとしても人気の「神社」ですが、今年は参拝も思うようにできない状況が続いています。手元の御朱印帳を眺め、思いを馳せていた筆者。ふと「参拝に行けなくても日本の神様について学ぶよい機会では!?」 と思い立ち、本棚にあった『古事記』を手に取りました。1時間後……登場する神様の多さに脳内処理が追いつかず、あえなく挫折。

スイスイ読める『古事記』の指南書的な本はないかと探していたときに出合ったのが、歴史家の戸矢学さん監修、ふわこういちろうさんが漫画を描いた『愛と涙と勇気の神様ものがたり まんが古事記』です。子どもに手を焼いたり、夫婦喧嘩したりと大忙しの神様たちを本書で知るにつれ、いつしか神様に親近感を抱いている自分にビックリ。神社巡りも一層味わい深くなること請け合いの本書から、かの有名な「天岩戸神話(あまのいわとしんわ)」を特別に一部抜粋してご紹介します!
 

日本最古の歴史書『古事記』は、とにかく神様がたくさん登場します。その数、なんと321柱!「どういったご関係で……?」とならないよう、本書では「神様系図」ほか混乱しがちな情報をまとめたページも充実しています。「天岩戸神話」は、アマテラスとスサノオが主人公です。

 

イザナギ(伊邪那岐神・いざなぎのかみ)から生まれたアマテラス(天照大御神・あまてらすおおみかみ)、ツクヨミ(月読命・つくよみのみこと)、スサノオ(建速須佐之男命・たけはやすさのをのみこと)の3柱は、イザナギからの言いつけでそれぞれの国を治めることになりました。

 

 

 

アマテラスは天上界の高天原(たかまのはら)を、ツクヨミは夜の国をしっかり治めていましたが、海原を治めるよう命じられたスサノオだけは言いつけを守らず、ヒゲボーボーで泣きわめく日々を送っていました。そんなスサノオのせいで国は荒れ放題になり、怒ったイザナギはスサノオを追放してしまいます。

 

国を去る前に挨拶をしようと、スサノオは高天原のアマテラスを訪ねることに。しかし、スサノオが高天原を奪いにきたと思ったアマテラスは完全武装でお出迎え! 警戒心を解いてもらおうとこれまでのいきさつを伝えるスサノオ。それでも信じることができないアマテラス。そこで、一種の占いによって勝敗を決めることにします。

 

その結果……なんとスサノオが勝ってしまいました。有頂天になったスサノオは、アマテラスが治めていた高天原で暴れまくります。あまりにも傍若無人なスサノオに、アマテラスはついに失望し、天岩戸に隠れてしまうのでした。

 

太陽の神・アマテラスが隠れたことで世界は暗闇に包まれます。困った八百万(やおよろず)の神々は集会を開き、知恵の神・オモイカネ(思金神・おもいかねのかみ)の発案で祭りをひらくことにしました。壮大な「アマテラス様・お願い出てきて!大作戦」の始まりです。

 

暗闇の中、外がお祭り騒ぎで賑わっていることを不思議に思ったアマテラスは、つい気になって戸を少し開けてみることに。すかさず鏡をアマテラスに向けると、戸をふさいでいた岩をよけて、アマテラスを外に出すことに成功! 世界には再び光が戻りました。

 


「アマテラス様・お願い出てきて!大作戦」の成功は、芸能の神、知恵の神、力の神のほか、個性豊かなたくさんの神様たちによるチームプレーの賜物だったのです。

 


難解な世界観を楽しく学べるだけでなく、登場する神様が祀られる神社なども知ることができる本書は、『古事記』入門書にも副読本にもピッタリ。アマテラスが天岩戸から出てきた後のスサノオがどうなったのか、気になる続きはぜひ本書でお楽しみください!
 

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『愛と涙と勇気の神様ものがたり まんが古事記』

監修:戸矢学 漫画:ふわこういちろう 講談社 1400円(税別)

個性豊かな神様たちがかわいいキャラになって大活躍! 天岩戸開き、ヤマタノオロチ、因幡の白兎など、大人も子どもも楽しみながら学べる『古事記』入門として、長く愛されるロングセラーの一冊です。


構成/金澤英恵