漫画家になる人ってどんな家庭環境で育ち、どのようにして漫画家になったのか気になりませんか? 擬人化された動物たちが共存する世界を描いた『BEASTARS』(秋田書店)で第11回マンガ大賞、第22回手塚治虫文化賞新生賞、第42回講談社漫画賞少年部門などさまざまな賞を受賞した板垣巴留(ぱる)さんが「Kiss」に連載していた、自伝的エッセイ漫画『パルノグラフィティ』が8月6日に発売されました。かなりキャラ立ちした家族との暮らしを中心に、現在の作家生活も交えつつ、さまざまなエピソードでぐいぐい読ませる一冊です。

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『パルノグラフィティ』(Kissコミックス)

2016年から連載が始まり、現在20巻まで刊行中の『BEASTARS』。日本のみならず海外でも各国語版が発売され、アニメも人気の作品です。著者は現在26歳の板垣巴留さんで、5人家族で長女と9歳、次女と6歳離れた三姉妹の末っ子。父は『グラップラー刃牙』シリーズをはじめとする格闘漫画で多くのファンを魅了する板垣恵介さんです。

 

今回、初エッセイ執筆の声がかかってうれしい反面、自分は“すごく普通の人間”で、面白いエッセイが描けるかどうか悩みながらも、まずは実家と家族のことを思い出してみる巴留さん。

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家族の記念になるものは何でも飾りたがる母、人間離れしたレベル(家族談)でいつも穏やかな長女、上下関係に厳しくて派手な次女、仕事場での漫画執筆に専念し、月に何度か自宅に帰ってくる父に囲まれていたのが、ひねくれ者だった末っ子のパル(板垣巴留さん)です。かなり個性的な面々との暮らしは、エッセイのネタにならないどころか、期待大な予感!

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動物が好きで小さい頃からよく絵を描いていたという巴留さん。美大で映画について学んだものの、完成までにものすごい労力を要することを知り、壁にぶち当たります。そんな時、漫画なら紙とペンを使って一人で作り上げることができることに気づき、漫画家を志すようになったそう。

記事下の「試し読み」で読めるのは、母と長女とのエピソード。
幼稚園の時、クレヨンで海の絵を描くことになったパルさんは、強烈なインスピレーションに押されるように、血の海で人間の手足がのぞく絵を完成させます。映画「ジョーズ」に影響を受け、本人にとっては今でも思い出せるほどの力作でしたが、幼稚園の先生からとダメ出しされてしまいます。その作品を見た母は……。

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もう一つは美大4年生の時、就職活動で20社以上も落ちてしまい、落ち込んでいた時のこと。漫画を描き始めた頃で、まだ誰にも見せていなかったものの、自己肯定感が著しく低くなっていたパルさんが頼ったのは長女で……。

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どちらも日常の小さなエピソードなのですが、家族の何気ない後押しが積み重なって、未来の漫画家へとつながっていったのか、と小さな感動(と笑い)を覚えます。やっぱり褒められるのって大事だな。

板垣巴留さんの代表作「BEASTARS」は、肉食獣と草食獣が共存する世界の青春群像劇なのですが、動物を擬人化することを通して、種の多様性や相容れない対立、種を超えた友情や愛情などを複層的に描き出した奥深い作品です。そんな独創的な物語を描き出す作者が、家族や幼少期などを題材にすると、こんなにもユーモラスで時には心が温まったり、ほろりとさせられたりする物語になるなんて! 各エピソードは4ページと短いけど、ものすごく濃い! 良質なショートムービーを見ているような感じです。時々登場する、存在感たっぷりの父と祖父のエピソードも読み応えあり。“すごく普通な人間”どころか、強烈な個性が輝きを放っていますから!
 

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『パルノグラフィティ』

板垣巴留 (著)  講談社

マンガ大賞2018をはじめ主要漫画賞を総ナメにした話題作『BEASTARS』の作者が贈る、くすっと笑った後にほろっと泣ける自伝的ショートホームドラマ! 板垣家のひねくれた末っ子だったパルが、なんでも褒めてくれる母、いつでも穏やかな長女、流行大好きなギャルだった次女、そして自分が生まれる前から漫画を描き続けている父との、大人になった今も胸に残る思い出を綴ります。