経済が伸びないと当然のことながら賃金も上昇しません。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、2012年から2019年までの7年間で米国人やドイツ人の賃金は1割上昇しましたが、日本人の賃金はほとんど横ばいでした。これは購買力平価のドル換算で比較した結果なので、為替や物価の影響をすべて考慮したものです。つまり過去7年間で日本人は米国人やドイツ人よりも、事実上、1割、年収が減ったことになります。
日本の大卒初任給は約20万円ですが、米国では50万円を超えることも珍しくありません。多くの人が手にしているiPhoneは機種によっては10万円くらいしますが、初任給が20万円の日本人と50万円の米国人では、同じiPhoneを買う場合でも、負担感はかなりの差となります。
毎日、買い物をする時に値札をしっかりチェックしている人であれば、食料品を中心に、毎年のように価格が上がっていることは実感として理解できているはずです。給料があまり伸びず、値上げに苦しんでいる人からすると、アベノミクスで生活が良くなったとは感じないでしょう。
海外と同じレベルの成長を実現できなければ、商品の値上げという形で私たちの生活を圧迫するという現実を考えた場合、アベノミクスについて成功だったと言い切るのは難しそうです。
今後、私たちの生活がよくなるのかは、菅新首相の経済運営にかかっているわけですが、菅氏はアベノミクスを継承するとしていますから、当面、大きな変化はないと考えられます。新型コロナウイルスによる影響は別にして、首相が菅氏に代わったことで、急激に経済が悪化するリスクは低いでしょう。
一方、アベノミクスから何の変化もなければ、海外との格差は埋まらず、生活水準が上昇しないということも十分に考えられます。
前年より成長することはもちろん大事ですが、それに加えて諸外国と同レベルの成長を実現できるのかが豊かさのカギを握っています。この部分こそが、菅政権の経済政策を評価する上で重要なポイントとなるでしょう。
前回記事「日本の歴史的建物が次々と壊されている本当の理由」はこちら>>
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